メニュー

クリニック通信6月号

[2026.05.31]

【開院8年目を迎えて】

■ おかげさまで8年目を迎えました

令和元年6月1日に当院は開院し、おかげさまで8年目を迎えることができました。

患者さまから「開院して何年になりますか」とご質問いただくことがありますが、当院は令和の始まりとともに歩んでまいりましたので、今年で8年目となります。覚えやすいのではないでしょうか。

これまで多くの皆さまにご来院いただき、地域医療に携わる機会をいただいておりますことを心より感謝申し上げます。また、この8年間を支えてくれた素晴らしいスタッフにも深く感謝しております。スタッフの力なくして、今日まで診療を続けることはできませんでした。

■ 私にとっての「6月」という月

さて、6月開業というのは少し中途半端な時期に思われるかもしれません。しかし私にとって6月は節目の月です。

私が医師になった1990年代は、医師国家試験の合格発表が4月中旬だったため、多くの病院で研修医が正式に働き始めるのは5月から6月でした。私は東京大学の内科研修医として、5月から当時護国寺にあった東大病院分院(第四内科)に配属され、6月から研修医として働きだしました。その後病院を移動する際にはいつも6月からでした。

■ 東大病院分院での思い出

当時は東大本院もまだ古い病棟でしたが、分院はそれにも増して歴史を感じさせる建物でした。現在放送中の連続テレビ小説「風、薫る」に登場するような板張りの廊下やレンガ造りの建物が残っており、すでに新しい病棟であった母校・北海道大学病院との違いに驚いたことを覚えています。

当時の私は、自分が外部出身者だから古い病院へ配属されたのではないかと思ったものです。しかし実際には、東大出身者と他大学出身者が入り混じって勤務しており、そのようなことで差別的な扱いを受けることはありませんでした。

分院は本院とは雰囲気が異なり、大学病院というよりも、どこか地域に根ざした街の病院のような温かさがありました。患者さんの中にも、そのアットホームな雰囲気を気に入って長く通われている方が多かったように思います。

■ のんびりとした時代

また、今から振り返ると、どこかのんびりとした時代でもありました。教授と二人で昼食をご一緒する機会があったり、第四内科の医局旅行やビアガーデンなど、医局全体で行う行事も数多くありました。

■ 身体診察の大切さを学ぶ

診療面では、教授回診のほかに、毎週土曜日の午前中に助教授のY先生と研修医による回診がありました。その際には身体診察の方法を細かく教えていただきました。当時の私は忙しさもあって、一人の患者さんに20分、30分とかけて丁寧に診察することに付き合うのが正直なところ大変だと感じていました。しかし今になって振り返ると、患者さんをしっかり診て、身体所見を丁寧に取ることの大切さをそこで叩き込まれたのだと思います。

■ 「チューベン」の先生方

研修医には、それぞれ卒後3〜5年ほどの若い医師が指導役として付きました。東大では「チューベン」と呼ばれており、外部の病院で研修を積んで戻ってきた先生方です。

私の担当はN先生でした。N先生は公立昭和病院の救命センターで長く研修されており、手技の見事さには定評がありました。

■ 忘れられない出来事

ある時、「男はつらいよ」のタコ社長役で知られる俳優の太宰久雄さんが入院されていました。担当医が中心静脈カテーテルの挿入に苦戦していたためN先生が呼ばれ、私はその様子を見学しました。N先生はあっという間にカテーテルを挿入し、太宰さんは「いやー、気持ちいいねえ」と、まるで映画そのままの江戸っ子口調で話されました。「寅さん」のファンだった私には忘れられない思い出です。

N先生をはじめ、公立昭和病院で研修した先生方は皆手技が非常に上手でした。その姿に憧れた私は、2年目の研修先として公立昭和病院救命センターを希望し、実際にそこで研修を行うことになりました。

■ 研修医にできたこと

さて6月から正式に研修医として働き始めまたものの、カルテやサマリー、温度板を書くことはできても、医師として実際にできることはまだ限られていました。現在放送中の「風、薫る」でも、看護婦見習いの主人公が患者さんの話を聞くことしかできない様子が描かれていますが、当時の私たち研修医もよく似たものでした。治療方針を決めたり手技を行ったりするのは主に上級医の役割であり、研修医にできることは患者さんのお話をじっくり伺うことくらいでした。

そのため、患者さんのお話を長時間聞かせていただくことも少なくありませんでしたが、今思えば、それは患者さんと向き合う大切な時間だったように思います。

■ 医療は変わっても

現在の大学病院では「チーム医療」が進み、多くの医師や看護師、薬剤師が患者さんの診療に関わるようになりました。その一方で、「誰が主治医なのか分からない」「誰に相談すればよいのか分からない」と仰る患者さんも少なくありません。

医療は大きく進歩し、私が研修医だった頃と比べると、検査や治療の選択肢は格段に増えました。しかし、患者さんのお話をよく聞き、その方が何に困り、何を不安に感じているのかを理解することの大切さは、今も昔も変わりません。

■ これからも地域の皆さまとともに

研修医時代に患者さんのお話をじっくり伺い、丁寧に診察することの大切さを学んだ経験は、今の私の診療の土台になっています。

開院から8年目を迎えましたが、これからも患者さん一人ひとりに寄り添う医療を大切にしながら、地域の皆さまのお役に立てるよう努めてまいります。

                            文責 齋藤 幹

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME