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原発性アルドステロン症

[2026.01.22]

原発性アルドステロン症(Primary Aldosteronism:PA)とは

副腎の位置(腎臓の上にある小さな臓器)
副腎は腎臓の上にある小さな臓器です
アルドステロンの働き(腎臓でナトリウム再吸収→体液量増加→血圧上昇)
アルドステロンは腎臓に作用し、体液量を増やして血圧を上げます

原発性アルドステロン症(PA)は、副腎からアルドステロンが自律的に過剰分泌されることにより生じる内分泌性高血圧です。

アルドステロンは腎臓でのナトリウム再吸収を促進し、体液量を増加させることで血圧を上昇させます。

本来はレニン・アンジオテンシン系によって調節されるホルモンですが、PAではこの制御が破綻し、レニンが抑制された状態でもアルドステロン分泌が持続します。

原発性アルドステロン症の頻度と重要性

近年の研究により、PAは

  • 高血圧患者の約5〜15%
  • 治療抵抗性高血圧では20%以上

を占めると報告されています。

脳卒中・心筋梗塞・心不全・腎機能障害などのリスクが上がる
PAは心血管・腎イベントのリスクを高めることが知られています

PAは単なる高血圧ではなく、

  • 脳卒中
  • 虚血性心疾患
  • 心不全
  • 慢性腎臓病

といった心血管・腎イベントの発症リスクが本態性高血圧より高いことが明らかになっています。

したがって、早期診断と適切な治療介入が予後改善に直結する疾患です。

こんな症状があったら要注意!PAを疑うべき臨床像

以下のような高血圧では、PAのスクリーニングが強く推奨されます。

  • 低カリウム血症を伴う高血圧
  • 複数の降圧薬を使用しても血圧がコントロール不良
  • 若年発症(特に40歳未満)の高血圧
  • 重症高血圧(150/100mmHg以上)
  • 副腎偶発腫瘍を合併する高血圧
  • 睡眠時無呼吸症候群合併例
  • 若年性脳卒中の既往

なお、低カリウム血症を伴わないPAも多いため、電解質異常がなくても除外はできません。

PAの検査について

採血(ARR)→必要に応じて機能確認検査→副腎CT→AVS→治療方針
検査は段階的に進み、すべての方が詳しい検査を受けるわけではありません

スクリーニング検査:アルドステロン/レニン比(ARR)

PAの初期評価には、血漿アルドステロン濃度(PAC)とレニン(PRAまたはARC)から算出するARRを用います。

  • 現在はCLEIA法(精度の高い測定法)による測定が標準
  • ARR高値かつレニン抑制が特徴的

PACが正常範囲でも、レニンが十分に抑制されている場合はPAを否定できません。

機能確認検査(確定診断)

スクリーニング陽性例では、アルドステロンの自律性分泌を確認するために機能確認検査を行います。

代表的な検査:

  • カプトプリル負荷試験
  • 生理食塩水負荷試験
  • フロセミド立位試験
  • 経口食塩負荷試験

ただし、

  • 明らかな低カリウム血症
  • PAC高値
  • レニン抑制

をすべて満たす場合には、機能確認検査を省略して診断可能とされています。

病型診断(サブタイプ診断)

PAは主に以下の2つに分類されます。

  • 片側性PA
    アルドステロン産生腺腫(APA)
  • 両側性PA
    特発性アルドステロン症(IHA)
画像検査
  • 副腎CTは全例で実施
  • ただし、CT所見のみで病型を決定することは推奨されません
副腎静脈サンプリング(AVS)
  • 病型診断のゴールドスタンダード
  • ACTH負荷下で左右副腎のホルモン分泌を評価
  • 手術適応の判断に不可欠

特に35歳以上では、非機能性副腎腫瘍の合併が多く、AVSの重要性が高くなります。

治療について

片側性PAは手術、両側性PAは薬物治療が基本
病型(片側・両側)により治療方針が変わります

片側性PA

  • 副腎摘出術
  • 血圧改善、低カリウム血症の是正、薬剤減量・中止が期待されます

両側性PA

  • ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬による薬物療法
  • 原則として長期継続治療

近年は非ステロイド型MR拮抗薬の選択肢も増え、腎機能や合併症に応じた個別化治療が可能になっています。

まとめ

  • 原発性アルドステロン症は頻度の高い二次性高血圧
  • 心血管リスクが高く、見逃しが予後に直結
  • スクリーニングは比較的簡便
  • 病型に応じた治療により根治またはリスク低減が可能

当院の方針

当院では、高血圧診療の一環として原発性アルドステロン症を積極的に鑑別し、必要に応じて専門施設と連携しながら診療を行っています。

よくあるご質問(Q & A)

Q1.原発性アルドステロン症は珍しい病気ですか?

いいえ、決して珍しい病気ではありません。

高血圧のある方の約5〜15%にみられるとされており、思っている以上に頻度の高い病気です。

「年齢のせい」「体質だから仕方がない」と考えられている高血圧の中に、原発性アルドステロン症が隠れていることがあります。

Q2.自覚症状はありますか?

多くの場合、はっきりした自覚症状はありません

ただし、

  • 血圧がなかなか下がらない
  • 動悸や頭痛
  • 筋力低下や手足のしびれ(低カリウム血症がある場合)

といった症状がみられることがあります。症状がなくても、検査で見つかるケースは少なくありません。

Q3.健康診断で「カリウムが低い」と言われました。関係ありますか?

はい、関係があります。

原発性アルドステロン症では、アルドステロンの作用により尿中にカリウムが多く排泄されるため、血液中のカリウムが低くなることがあります。

ただし、カリウムが正常でもこの病気を否定することはできません

Q4.検査は大変ですか?

最初の検査は、通常の採血だけで行えます。

血液中の「アルドステロン」「レニン」というホルモンを測定し、必要に応じて追加検査を行います。すべての方に詳しい検査が必要なわけではありません。

Q5.降圧薬を飲んでいても検査はできますか?

はい、多くの場合降圧薬を中止せずに検査が可能です。

薬の種類によって検査結果に影響することがありますが、当院ではその点を考慮したうえで結果を評価します。

Q6.手術が必要になることはありますか?

原因が片側の副腎にある場合には、手術によって根本的な治療(治癒)が期待できます。

一方、両側の副腎が原因の場合は、手術ではなくお薬による治療を行います。

すべての方が手術になるわけではありません。

Q7.手術をすると血圧の薬は不要になりますか?

手術後に「血圧が正常化する」「薬が減る、または不要になる」方も多くいらっしゃいます。

ただし、高血圧の期間が長かった場合などは、一部の薬を継続することもあります。

Q8.薬での治療は一生続きますか?

両側性の原発性アルドステロン症では、長期的にお薬を続ける必要があることが多いです。

ただし、適切に治療することで血圧やカリウム値を安定させ、将来の合併症を防ぐことができます。

Q9.放置するとどうなりますか?

治療せずに放置すると、脳卒中・心筋梗塞・心不全・腎機能障害といった重い合併症のリスクが高くなります

原発性アルドステロン症は、早く見つけて治療することで将来を守れる病気です。

Q10.どの診療科を受診すればよいですか?

高血圧の診療を行っている内科・循環器内科・内分泌内科で相談することができます。

当院では、高血圧診療の中で原発性アルドステロン症を含めた二次性高血圧の評価を行っています。

すでに高血圧で通院中の方は、現在の主治医に相談していただいても構いません。

まとめ(患者さんへ)

  • 原発性アルドステロン症は治療可能な高血圧の原因
  • 自覚症状がなくても検査で見つかることがある
  • 早期診断・治療で、将来の病気を防ぐことができる

血圧について気になることがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

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