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新型コロナウイルス感染症の後遺症(いわゆるLong COVID)について(2021/29更新)

[2021.01.27]

こちらもごらんください。(2021/2/9更新)

東京での新型コロナウイルスの「PCR陽性者」の数がようやく下がってきているように思います。年末年始の「PCR陽性者」の増加の原因が一体何であるのかは今のところはっきりしておりません。年末の帰省、会食の増加などが言われていますが、一方で気候のせいであるとか、民間のPCR検査が(帰省のため)増えたからなど様々な原因が挙げられています。我々としては引き続き「感染しないこと」「感染させないこと」に注意を払いつつ生活していきたいと考えています。

ところで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では後遺症(Long COVID)のことがしばしば問題となってきました。これは春先の流行の際にも話題となりましたが、この冬の感染者数の増加により今後さらに問題になることが予想されます。

新型コロナウイルス感染症の後遺症(Long COVID)について

そもそも新型コロナウイルスの後遺症とはどんなものをいうのでしょうか?
最も早い報告はイタリアからの報告でした。この報告によると新型コロナウイルス感染症(COVID-19)143人の回復者のうち、回復後(平均2か月後)に87%の方が何らかの症状を訴えていました。症状のうち倦怠感が53%、呼吸困難感が43%、胸痛が22%に認められ、その他関節痛、咳嗽、嗅覚異常、など様々な症状が認められたそうです。

また、アメリカの電話調査では270人の患者のうち65%で7日程度で普段の健康状態に回復したものの、35%の人が2~3週間後も普段の健康状態に復帰していないと回答しています。
 日本での電話調査(63名)では、発症から60日たった後にも嗅覚障害(19.4%)、呼吸困難(17.5%)、倦怠感(15.9%)、咳嗽(7.9%)、味覚障害(4.8%)があり、さらに発症から120日たった後でも呼吸困難(11.1%)、嗅覚障害(9.7%)、倦怠感(9.5%)、咳嗽(6.3%)、味覚障害(1.7%)を認めています。また、24%に脱毛が見られ、発症後30日から出現して、約120日まで認められています。持続期間は平均76日間となっています。

新型コロナウイルス感染症後の心臓の異常について

私の専門である循環器疾患でも後遺症を疑われる所見の報告があります。
ドイツからの報告によると、新型コロナウイルス感染症の回復者の100人のうち、その後(中央値71日後)心臓MRI検査を受けたもののうち78人に異常所見を認めたと言われています。また、検査前に高感度トロポニンT検査(hsTnT)が3pg/ml以上だった患者さんは71人いました。
心臓MRIの所見のうち、ガドリニウム造影での心筋遅延造影が32人、心膜遅延造影が22人に認められました。また、心筋遅延造影が見られた患者のうち、12人 は虚血性のパターンを示しました。

中国からの後遺症の報告

こちらは2021年1月にランセットに報告された約1700例の新型コロナウイルス感染症の後遺症についてです。
解析対象は、COVID-19と確定診断されて武漢市の病院に入院し、2020年1月7日~5月29日に退院した患者1,733例で、年齢中央値は57.0歳で男性が52%でした。

 

追跡調査時に、全体の76%がなんらかの症状があると回答しました。最も多く見られた症状は倦怠感/筋力低下(63%)、次いで睡眠障害(26%)、脱毛(22%)、嗅覚障害(11%)の順でした。

この結果から半年後の主な後遺症は倦怠感と筋力低下、睡眠障害などとなっています。また、重症度が高いほど肺の拡散能低下や、倦怠感、筋力低下、不安神経症などの頻度が高くなることがわかりました。

新型コロナウイルス感染症の後遺症の病態について

後遺症の病態はいったいどういったものが考えられるでしょうか?

ひとつはその臓器自体のダメージです。たとえば心臓ではウイルス性の心筋炎が起こっている可能性があります。
心筋炎のために、高感度トロポニンT検査(hsTnT)やトロポニンIが上昇している可能性があります。
また、肺では肺塞栓症や間質性肺炎などの病態が考えられます。これにはDダイマーやKL6などのマーカーの測定が有用ですし、拡散能の検査でも確かめられます。
中国武漢からの報告では、COVID-19による肺障害の所見はSARSの長期的な呼吸器障害と類似しているとの指摘もあります。

次に指摘されるのは、個室やICUでの隔離による不安やストレスなどのいわゆる集中治療後症候群(post intensive care syndrome:PICS)のような状況が症状を引き起こしている可能性があります。

さらに挿管人工呼吸管理やECMO装着などによる筋力低下も関連していると思われます。

日本では軽症の場合は、自宅療養がメインとなっています。10日間も自宅で安静にしているとそれだけで筋力低下、廃用症候群となってしまう可能性もあります。

新型コロナウイルス感染症の後遺症の対応について

現在後遺症に対する対策や治療については、エビデンスのある確立した対策や治療はありません。主に対処療法となります。もちろん心臓や肺に後遺症がある場合は、血液データや画像データのフォローが必要となってきます。比較的頻度の多い呼吸困難については、呼吸器リハビリテーションで改善するとの報告もあり注目されています。
倦怠感や疲労感などはウイルス感染後で起こることが言われている慢性疲労症候群(CFS)などでも認められている症状であり、心療内科も含めて精神的なケアも必要と考えられます。

こちらも参考にしてください。

 

 

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