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睡眠時無呼吸症と心臓病

[2019.07.31]

睡眠時無呼吸症はその名前の通り睡眠中に呼吸がとまってしまう病気です。いびきがひどい、日中眠気がとれない、頭痛がするなどの症状から疑われて受診されます。当院は無呼吸症の治療を行っておりますので、症状を訴えて受診される方がいらっしゃいますが、皆さんの中でいびきや日中の眠気などの症状で循環器内科を受診しようと思う方はどれだけいらっしゃるのでしょうか?

どちらかというと呼吸器内科や耳鼻科などを受診する方が多いような気がします。

私は日本睡眠学会の会員ですが、睡眠学会の会員の先生方の専門科は精神科、耳鼻科、呼吸器内科、循環器内科など多岐にわたっております。そういえば自分の出身大学の北海道大学の睡眠学の権威である本間先生は生理学が専門だったはずです。

自分が睡眠時無呼吸症について意識したのは国立国際医療センターで循環器内科のレジデントをしていた時だったと思います。当時急性心不全で緊急入院する方を沢山見ておりましたが、その中には呼吸状態が非常に悪く救急外来でそのまま気管内挿管をして人工呼吸器管理をするかたも多くいました。当時は(今もそうだと思いますが)、人工呼吸管理をしている間はCCUという心臓の集中治療室に入院しております。私が医療センターにいた時は、CCU担当の医師などはおらずに、自分の担当患者がCCUに入っているときは自分がそこにいって患者様の管理をしておりました。急性心不全の多くは人工呼吸管理としても1日から数日で状態が改善し、気管内チューブを抜去して酸素マスクなどで管理することがほとんどでした。状態としてはよくなっているのですが、挿管チューブを抜去した後はしばらくは酸素マスクで大丈夫なのか様子を見る必要がありますので、自分も一日中CCUにはりついておりました。CCUにいるときは患者さんの部屋にいるか、心電図モニターの前にいることがほとんどなのですが、夜になってこちらがうつらうつらしていると、モニターが「カンカン」と鳴りだすことがあります。不整脈で鳴ることもありますが、多くがSpO2(酸素飽和度)の低下によるものです。SpO2は正常な人は普段は96-98%程度で経過することがほとんどですが、心不全の人は90%を切るような状態で、抜管直後には95%程度を維持していたものが、夜中に80%や70%などと低下していくことがあります。急いで患者様のところにかけつけると、患者様は眠っているのですが、呼吸が止まっていたり、不規則な呼吸をしていたり、大きないびきをかいていたりします。呼吸が止まるのもほんの数秒というよりは30秒から1分とかなり長く、みているだけでこちらが不安になってきます。いびきをかいて呼吸が止まる方は下顎をもちあげてあげると「息を吹き返す」人もいてどうしても繰り返す人はnasal airwayという鼻からチューブを入れたりすることもありました。また、患者様によっては呼吸がだんだん大きくなってその後徐々に小さくなりその後呼吸が止まってしまうというようないわゆる「チェーン・ストークス呼吸」をされる方もいました。このように心不全患者さんには無呼吸でいうOSAS(閉塞性無呼吸症)とCSAS(中枢性無呼吸症)の方が多く合併するという事を身をもって実感しています。

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その後の様々な臨床的な経験からも心不全や狭心症、心筋梗塞で睡眠時無呼吸症を合併する患者様を多く見てきました。実際に多くの研究結果から睡眠時無呼吸症があると高血圧、心不全、狭心症、不整脈、脳梗塞など循環器疾患や動脈硬化疾患になりやすいこと、逆に高血圧、心不全、狭心症、不整脈、脳梗塞の患者様に睡眠時無呼吸症が合併することが報告されています。高血圧、心不全、狭心症、不整脈、脳梗塞を扱うクリニックで睡眠時無呼吸症を診ないのは片手落ちではないかと思いますし、睡眠時無呼吸症を扱うクリニックで高血圧、心不全、狭心症、不整脈、脳梗塞を診ないというのも自分には何だか片手落ちな気がしてしまうのです。私が訪問した無呼吸症を専門に扱うクリニックの先生は自分は循環器の専門ではありませんでしたが、「睡眠時無呼吸症はほとんど循環器の病気なんだよ!」と断言されていたのも印象的でした。

睡眠時無呼吸症の診断で難しい点は、自覚症状がない人が非常に多いことなのです。「いびき」は自分では分かりませんし、日中の眠気も必ずしも感じないものなのです。しかしながら無呼吸が体全体に悪影響があることは確実です。私が何度も経験した心不全患者様の無呼吸症も、夜中に息が止まってSpO2が70%になって苦しそうな症状をうかべても当の本人はケロッとしているものなのです。しかしモニター上の脈拍はどんどん上昇してきますし、Alineという動脈圧を測定しているとどんどん血圧が上昇していくのが分かります。

無呼吸の自覚がある方だけでなく、高血圧、心不全、狭心症、不整脈、脳梗塞などの治療をしている方は一度睡眠時無呼吸症の検査を行うことを強くお勧めいたします。

国立循環器病センターのこちらのサイトも是非一度ご覧ください。

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