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ミニエッセイ#3 シベリウス

[2021.02.08]

先日ラジオをつけていましたら、シベリウスの交響曲1番が流れてきました。シベリウスは19世紀後半から20世紀にかけて活躍したフィンランドの大作曲家ですが、一般的に知られている曲としては「フィンランディア」くらいで皆さんはほとんど聴いたことがないのではないでしょうか?
私は小さいころからヴァイオリンを習っていましたので、シベリウスのヴァイオリン協奏曲はよく聞いたことがありました。ただ、しばしば演奏される割に今でもそれほど好きな曲ではありません。

シベリウスの交響曲1番は大学1年生の時に秋の定期演奏会で演奏した曲で、私が生涯で2番目に演奏した交響曲です(1番目はシューマンの4番)。まだオーケストラで演奏することに慣れていなかった私にとって、シベリウスの交響曲は演奏しにくいところがありました。譜面としてはそれほど難しくないのですが、その表現や独特のシンコペーションのリズムなどなかなかなじむことができずに、いつも不満を抱えたまま練習していたものです。

大学のオーケストラは例年春(6月)と秋(11-12月)の2回の定期演奏会がありますが、この年は1月に東京の人見記念講堂で演奏会があったために、秋の定期演奏会が終わった後もシベリウスの練習が続けられていました。
当時、私は1月に東京で演奏会があるために、年末年始に千葉の実家へ帰省しないで札幌に残って練習を続けていました。

ただ、年末年始はさすがに学生たちの姿は少なく、いつもの練習場(北大サークル会館)では孤独な個人練習をすることが多かったのです。ある日の夜いつものように個人練習が終わり、サークル会館から一人歩いて帰っておりました。サークル会館の周りは、運動場と農場、原生林が広がり人はほとんどいませんでした(まあ、要するに何もありませんでした)。

 

静かな雪道を歩きながら空を見上げると真っ暗な空に星が輝いていました。自分の息と足音を耳にしながら突然「ああ、これがシベリウスなんだ」と妙に納得したことを覚えています。雪による静寂や吹雪の音、人の息遣い、そんなものがシベリウスにはありました。シベリウスの独特のシンコペーションはフィンランド語に似ていると聞いたこともあります。
当時オーケストラでは北海道にいるとシベリウスが好きになると言われていましたが、それは北海道の気候とフィンランドの気候が似ているからだと勝手に思い込み、学生時代にシベリウスの交響曲を演奏するときには「これは自分たちの音楽なんだ」という特別な気持ちで演奏したものです。

シベリウスの交響曲は2番が有名ですね。2番はとても盛り上がりますので皆様も是非一度聴いてみてほしいです。自分は1番、2番、5番、6番、7番が好きです。5番はだいぶ前にコリン・デービスのロンドン交響楽団の演奏会に行ったことがありますが、温かみがあって素敵な演奏でした。

大学生の時に初めて聴いたときは、ジョン・バルビローリ指揮のハレ管弦楽団のCDをよく聴きました。バルビローリの演奏も自己主張は強くありませんが温かい演奏で、当時このCDでバルビローリが好きになってブラームス全集などを集めたものです。

邪道なのかもしれませんが、バーンスタイン指揮、ウィーン・フィルの演奏が今は好きです。とても遅いテンポでシベリウスらしくないのですが、やはり弦楽器の音色がとても美しくて、とくに1番はバーンスタインが亡くなる少し前の演奏であったと思い切なくなります。

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