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帯状疱疹について

[2021.11.23]

最近受診される方が多い、帯状疱疹について説明いたします。

<帯状疱疹とは>


帯状疱疹は、水ぼうそうと同じウイルスで起こる皮膚の病気です。
通常右側、または左側どちらか一方に出るのが特徴で、痛みを伴う皮膚症状が3週間ほど継続します。

症状としてはまずピリピリ、チクチク、ズキズキといった神経痛が出て、1週間程度で痛みがある部分に赤い斑点が見られるようになります。その後赤い斑点内に水ぶくれができ、水ぶくれが破れてびらん(ただれた状態)になり、最終的にそこがかさぶたになって症状がおさまる、という経過を辿ります。
症状の多くは上半身に現れ、顔面、特に目の周りにも現れることがあります。

多くの場合、皮膚症状が治ると痛みも消えますが、神経の損傷によってその後も痛みが続くことがあり、これは「帯状疱疹後神経痛(PHN)ピーエイチエヌ」と呼ばれ、最も頻度の高い合併症です。

また、帯状疱疹が現れる部位によって、角膜炎、顔面神経麻痺、難聴などの合併症を引き起こすことがあります。

加齢などによる免疫力の低下が発症の原因です。
特に50歳台から発症率が高くなり、80歳までに約3人に1人が帯状疱疹を発症するといわれています。疲労やストレスなども発症のきっかけになります。
また、糖尿病やがんなどの免疫力が低下する病気が原因になることもあります。

80歳までに約3人に1人が発症

<帯状疱疹の原因>


帯状疱疹の原因は水痘・帯状疱疹ウイルスなので、このウイルスの保有者であれば誰でも帯状疱疹になる可能性があります。

水痘・帯状疱疹ウイルスは水疱瘡(みずぼうそう)を引き起こすウイルスで、日本人の多くは幼少期に水疱瘡に罹患しているため、日本の成人の9割以上がこのウイルスを保有しています。初めて水疱瘡にかかった後、症状がおさまってもウイルスは完全に除去されるわけではなく、実は神経細胞に残っているのです。

 

水ぼうそう(水痘)

はじめて感染した時は
水ぼうそうとして
発症します

潜伏感染

治った後もウイルスは
長い間体内に潜んでおり、
普段は免疫力によって
活動が抑えられています

免疫力低下

加齢やストレスなどで
免疫力が低下すると
ウイルスが暴れだします

帯状疱疹

ウイルスは、
神経に沿って移動、
皮膚に到達し、
帯状疱疹を発症します

 

<帯状疱疹後神経痛(PHN:Post Herpetic Neuralgia)>


帯状疱疹の合併症のひとつに「帯状疱疹後神経痛(PHN)」があります。
これは皮膚症状がおさまった後も痛みが継続するもので、神経の炎症により神経自身が損傷されてしまい、なかなか修復されないために起こってしまう現象です。

一般的には皮膚症状(赤い斑点、水ぶくれ等)がおさまるにつれて帯状疱疹の痛みもおさまるのに対し、帯状疱疹発症後3~6ヵ月以上、場合によっては年単位で痛みが持続します。
50歳以上の患者さんの約2割6)がPHNへ移行するといわれており、年齢が高くなればなるほどPHN移行率も高くなります。高齢者の方は特に早期発見、早期治療が重要です。

<その他の合併症>


PHN以外にも様々な合併症が起こる可能性があります。ウイルスによる角膜炎、結膜炎といった眼の合併症、顔面神経麻痺、難聴など重篤な合併症もあります。頭頚部の帯状疱疹の場合、特に注意が必要です。

<帯状疱疹の治療>


帯状疱疹はウイルスによる神経の損傷と皮膚症状が現れる疾患です。
そのためウイルスを抑制する「抗ウイルス薬」が治療の柱となります。
ウイルスはどんどん増殖するためできるだけ早く、できれば皮疹が出てから3日以内に抗ウイルス薬を投与されることが望ましいとされています。また、抗ウイルス薬の使用が早ければ早いほどウイルス増殖が抑えられるため、重症化や帯状疱疹後神経痛を予防できる確率が高くなります。

<疼痛(痛み)と皮膚症状の治療>


帯状疱疹を発症すると、ウイルスが活性化して神経を攻撃するため、まず痛みを感じます。症状が進行するとウイルスが神経を経由して皮膚に移動し、神経が分布している部位に赤い斑点や水ぶくれをつくり、それに伴って痛みが強くなります。さらにウイルスが増殖することで皮膚症状も一層ひどくなり、広い範囲に炎症が起こるようになり、全身にパラパラと水ぶくれが現れたり、脳や肝臓に障害を起こすことがあります。

治療が遅れると神経痛が残ったり、皮膚に痕が残ったりする可能性があるため、なるべく早く抗ウイルス薬による治療を開始するとともに、鎮痛剤(痛みを抑える)や塗り薬(皮膚症状を抑える)を併用して治療が行われます。

<帯状疱疹の予防>


帯状疱疹の予防接種について

帯状疱疹はワクチンによって発症と「帯状疱疹後神経痛(PHN)ピーエイチエヌ」を予防することができます。
ワクチンは現在2種類のワクチンがあり、それぞれ下記のような特徴があります。

●弱毒生水痘ワクチン 商品名:乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」


弱毒化された生きたウイルスが含まれており、小児に使用する水痘ワクチンですが、2016年から帯状疱疹予防として認可されています。
1回の接種で済みますが、有効性は約50%で、5年を超えると有効性が低下します。
生ワクチンですので免疫抑制状態の方(免疫機能に異常をきたす疾患を有する方(HIV感染症など)、および免疫力抑制をきたす治療を受けている方)には接種できません。

●サブユニットワクチン 商品名:「シングリックス」


2020年に認可され、ウイルスの感染性をもたない部分だけが含まれています(組換えワクチンと呼ばれます)。
2か月間隔で2回接種(合計2本)が必要ですが、予防効果が90%以上と高く、効果の持続も長いため、弱毒生水痘ワクチンより好んで使用されます。生ワクチンを接種できない免疫抑制状態の方でも接種可能です。
弱毒生水痘ワクチンに比べて注射部位の痛み・発赤・腫れや、全身の筋肉痛・倦怠感などの副反応が多く出ます。また、生ワクチンに比べて費用がかかります。
とくに高齢者へはこちらのワクチンが勧められています。

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