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心雑音について

[2020.03.16]

新型コロナウイルスのニュースばかりで気が重くなる毎日ですが、皆さまは元気に過ごしていらっしゃいますか?

当院は循環器を専門とする内科のクリニックですので、新型コロナウイルスのことばかりでなく、循環器の話題もお伝えしないとと思っています。

今日は心雑音についてお話します。健康診断で心雑音を指摘されたことはありませんか?初めて心雑音を指摘されると驚く方もいらっしゃいますが、心雑音は日常的にしばしば遭遇する異常です。中には「こんなひどい心雑音がこれまで指摘されなかったのか?」と驚くようなはっきりとした心雑音の方もいらっしゃいます。

心臓の雑音は心臓の中に穴が開いていたり(心室中隔欠損症・心房中隔欠損症)、心臓の弁の狭窄(僧帽弁狭窄症・大動脈弁狭窄症)や弁の逆流(像帽弁閉鎖不全症・大動脈弁閉鎖不全症)などで見られますが、貧血や甲状腺機能亢進症などでも認められることがあります。

心雑音の頻度は?

心雑音はどのくらいの頻度でみられるでしょうか?実は小さい子供ではよく遭遇するもので、取り立てて気にすることではありません。一説では50-70%の子供に心雑音が認められるとも言われており、実は私の娘も小学校低学年の頃に心雑音が聞こえたので自分で心エコーをしたことがあります。心臓の病気はなかったのですが、当時一緒に働いていた小児科の医師には「このくらいの雑音ならほとんど全員に聞こえる」と言われたことを覚えています。こどもは心拍数が多く、筋肉や脂肪が少ないのでよく聞こえると言われています。

大人でも痩せ形の人などでは明らかな弁膜症がなくても心雑音を聴取することがあります。

心雑音の種類は

心雑音は「収縮期雑音」と「拡張期雑音」に分けられます。

収縮性雑音をきたす疾患としては、大動脈弁狭窄症、肥大型心筋症、僧帽弁閉鎖不全症などがあります。

拡張期雑音をきたす疾患としては、大動脈弁閉鎖不全症や三尖弁閉鎖不全症などがあります。

聴診の際には、心雑音が聞こえる場所と種類でその疾患を推測します。

 

心雑音の代表的な疾患

 

心雑音でよくみられる疾患は僧房弁逸脱症(僧帽弁閉鎖不全症)です。収縮中期クリック音が聞こえ,逆流がある場合は収縮後期雑音がこれに続きます。

 

最近注目されているのが、大動脈弁狭窄症です。

画像:大動脈弁狭窄症の病態

人口の高齢化と診断技術の発達により、重度大動脈弁狭窄症は年々増加しており、欧米では75歳以上の8人に1人が大動脈弁狭窄症を有し、30人に1人 (3.4%) が重度大動脈弁狭窄症を有していると報告されています。今後高齢化が進むと手術が必要となる患者さんがさらに増えるものと考えられます。

心雑音を指摘されたらどうするの?

大人になって心雑音が指摘された場合、上記のような弁膜症があることが多いです。弁膜症は軽度のものから重度のものまで様々な病状があります。弁膜症は心臓超音波検査ですぐに分かりますので健康診断で指摘された場合は、是非ご相談ください。一度は心臓超音波検査を受けることをお勧めします。

心雑音の思い出?

最近はあまりきちんと聴診しない医師が増えてきたように思えます。循環器の患者さんなのにそれまで全く聴診されず、私が聴診をしたら「大学病院では一度も聴診されなかった」と言われることは一度や二度ではありません。超音波装置の発達によってエコーをやれば簡単に分かるということもあり、あまり熱心に聴診しなくなっているようです。

自分が学生時代、当時の教授クラスの医師は結構真面目に聴診をしていたように思います。学生実習の時に患者さんをまわっては、これこれの雑音が聞こえるとよく教えてくれました。昔は今ほどエコーが発達していなかったので聴診が重要であったのだと思います。

ただ、今でも心臓の聴診は重要です。上記のような弁膜症の診断だけでなく、感染性心内膜症の悪化や、心膜炎、心不全の悪化が分かったりすることも何度も経験しました。心雑音は患者さんが自分で自覚することはできませんので、心して診療したいと思っています。

 

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