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新型コロナウイルス感染症と抗体検査

[2020.04.19]

(2020/5/16追記)

新型コロナウイルス感染症の抗体検査については、こちらをご覧ください。

クリニックへのお問い合わせのお電話は業務へ支障をきたすのでお控えください。

↓ここから、院長ブログ

新型コロナウイルス感染症についての院長ブログはかなりアクセスが多く驚いています。前回もコメントしましたが、私は感染症の専門ではなく循環器(心臓病)専門の新米の開業医ですので、感染症についての高度な知識や経験があるわけではありませんので、色々聞かれても正直言ってよく分からないといったところです。アクセスが多いのと自分の情報の整理のために新型コロナウイルスについてのまとめのサイト?を作りました。時々更新していますので、是非こちらもご覧ください。

前回から少し時間が経ちましたので、今の自分の興味ある点についてお話しします。

緊急事態宣言

安倍首相が4月7日に緊急事態宣言を行い、4月8日から都内で緊急事態宣言が発効しました。医者の掲示板をみるとずいぶん前から「緊急事態宣言を早く出せ!」「ロックダウンを早くせよ!」という意見が非常に多く、日本医師会なども何度も促しているような状況でした。その状況は10日以上過ぎた現在でも変わりありません。

今は緊急事態宣言中ということで、東京の通勤客は本当に減りました。昨日土曜日は昼までの診療で、午後に東京メトロに乗って帰宅しましたが、雨だったせいか一車両あたり十人以下ほどの人数で、本当にびっくりするくらいの少なさでした。メトロは換気に気をつけているようで、電車の窓が開いているのですが、昨日は雨のため地下鉄が地上に出た時に雨が入ってくるのではないかと少し心配になりました。また、今の季節はいいのですが、虫が発生する様な季節では網戸?みたいなものも必要になってくると思いました。どうするのか今から考えていかないといけませんね。

8割減は必要か?

さて、緊急事態宣言は全国に出て、今後感染者が減ってくるといいとは思いますが、どうなのでしょうか?北大の西浦先生は8割減ということを強調されているようですが、多くの人々が気がついているように、8割減をしてもコロナウイルスが地球上から消滅することはありません。結局我々は新型コロナウイルスとともに生きていくしかありません。

8割減、8割減ということで、多くの人たちが仕事を控えているような状況だと思います。テレビのニュースを見ると飲食店の中にはすでにお店を閉店しているところも少なくない様です。

これらのお店の中には自粛要請がなければ潰れなかったところも多いと思われます。命のためには仕方ないという人も多いと思いますが、そもそも自粛をすればコロナに感染しないという保証はどこにもありません。そんなデータはどこにもないのです。もしかしたら自粛したら助かる人が多いかも?くらいの感覚なのかもしれません?

皆様の中からは「イタリアやフランス、スペイン、アメリカの惨状を見たのか!」とお叱りを受けるかもしれません。もちろん警戒は必要でしょうが、イタリアやフランスと日本の状況は明らかに違います。

これから日本は感染爆発をするのか?

そもそも欧米に比べて日本は新型コロナウイルスが国内に入ってきた時期は早いのです。その後だらだらと感染が広がっているという状況で、(検査が少ないとの批判はありますが)欧米の広がりと武漢を除く中国や韓国などのアジア地域では感染の状況が明らかに違います。

この原因が人種差によるものなのかマスクなどの衛生面なのか、最近よく言われているBCGによるものなのかは自分には分かりません。

感染の広がりが違うのに、欧米と同じ政策をとることが正しいとは思えないのです。

医師、特に感染症が専門の医師は感染者を一人でも多く出さないことが大きな目的の一つですから、感染の可能性が少しでも多くなることを嫌います。

これは平時の時からそうです。我々循環器が専門の人間からすると「ちょっとうるさいなあ!!細いかなあ!」と思われる様な感染制御のことや診断、治療のことを言うのが感染症の先生のイメージです。

こういうとちょっと不謹慎かもしれませんが、感染症の先生がいうことを全て真実だと思い実行するというのはちょっと違うなあと思います。

例えば、整形外科の先生が、「柔道は骨折などの重傷を負うことが多いので世界中で禁止してください」と言われた場合に、それはなるほどその通りだとは思わないでしょう。

救急部の先生が、「自動車事故で亡くなる人が多いので自動車は全て禁止にしてほしい」と言ったらそれもおかしいでしょう。確かに自動車事故で亡くなる人はいなくなりますが、社会生活に大きな支障をきたすでしょう。

そもそも救急車などもなくなりますから、自動車事故以外の事故の場合も病院に運ばれることはなくなって、トータルとして死者は増えるかもしれません。

結局はバランス問題じゃないかと思うのです。

今回、日本のコロナの対応をダメだダメだという人たちは、なぜか欧米に住んでいる日本人が多いようです。

おそらく自分たちが恐ろしい思いをしているからという使命感で発言しているのだと思います。

その方達の発言に耳を傾けるのはいいのですが、心の中では(だけど、そちらの方が後から感染して感染者数も死亡者数もどんどん増えているのですけど、何でありがたく聞かないといけないの??)みたいな気持ちがしてきてしまうのですよね。ひねくれていますか??

新型コロナウイルス感染症と抗体検査について

さて、前置きが長くなりました(長くなりすぎです)。新型コロナウイルス の抗体検査のことを書きたいと思います。

抗体検査のことはだいぶ前から気になっていましたのでこちらにも少しリンクを貼ってあります。

一般的にウイルス感染を起こした場合、上記の図の様に感染初期にIgM抗体が上昇しその後IgG抗体が出現しIgGはずっと血液中に存在します。これらの抗体は再度感染する際にウイルスを中和して感染を防御する働きがあります。

新型コロナウイルス の場合、感染した場合に皆が同じ様にこの様な経過をとるとは今の所はっきりとは分かっていませんが、もしこのような経過をとるとすれば、感染にかかってから時間が経ってから採血してもコロナに感染しているかどうかが分かるというものです。

新型コロナウイルス感染症では無症状の人が多い

新型コロナウイルス感染症の特徴として、無症状感染者が多いことが指摘されています。

例えばこちらの報告によると原子力空母セオドア・ルーズベルト4800名乗組員のうち600名余りが感染したが、このうち60%は無症状であったとのことです。

この様に無症状の人が多いと、そもそも症状のある人にPCR検査をしていても無症状の人を見つけることはできませんので(濃厚接触者の場合は検査することになります)、隔離することはできません。

全く無症状の人でも感染の可能性があるとなると(今のところその様に考えられています)、これはこれで大変なことになります。誰もが感染源となる可能性が出てきます。

誰もが感染源となる可能性があるとなると、これはもう隔離の意味もなくなるし、ロックダウンしていた場合、それが解除できなくなってしまいます。

新型コロナウイルス抗体はどの程度認められているのか?

もし抗体検査で無症状の感染者の割合がわかれば、今度どのタイミングで自粛を解除すべきか分かってくると思います。

●こちらのドイツのデータでは約14%の人が抗体ができているという報告がある一方で、

●こちらのデータではカリフォルニアのサンタクララでは2−4%程度の感染率だった様です。

抗体検査の問題点

しかし新型コロナウイルス感染症の抗体検査にはいくつか問題点があります。

上記に述べたように、そもそも抗体がどのように作られるか分かっていない点が一つです。

●また、こちらの報告では中国の抗体検査キットが不良品であったとの報告がもあります。

●埼玉医科大学からの報告ではやはり中国からのキットには信頼性が十分ではない印象があります。

●3月に横浜市立大学から抗体検査キットの発表がありましたが、こちらはまだ発売されていない様です。

●さて最近のニュースによると日本でも抗体検査の動きがある様です。医療従事者から検査を始めるということですが、ぜひ多くの医療従事者が検査できることを望みます。

抗体検査の解釈はまだまだ難しい

上記で何度も述べたようにコロナウイルスの抗体検査の解釈についてはまだまだ注意を要します。

こちらの文献では、感染がPCRで確認された6%の人に中和抗体が認められていないという報告があります。既感染でも抗体が作られないということになります?

これを見ると比較的若い人が抗体が少なくて、高齢者ほど抗体が多いことがわかります。

これが何を意味するかは専門家の意見を待ちたいところですね。

信頼性のある抗体検査が今できるのかは不明な点もありますが、PCRとは違う感染の広がりを測ることができるのでとても注目しています。

抗体検査は医療従事者に負担が少ない

抗体検査のいいところ?の一つ医療従事者の負担が少ないことです。

咽頭・鼻腔スワブの検体採取は、エアロゾルの発生により医療者が暴露して感染してしまうリスクがあります。抗体検査は一般的には血液検査で行いますので、エアロゾルの発生はなく暴露の心配がありません。また、抗体検査は一般的には急性期に行うというよりある程度時間が経ってから行うものなので、感染性も少なくなっていると思われます。

これからどうすればいいのか?

さて、最後の現時点の私の考えを述べたいと思います。

新型コロナウイルス感染症はこれまで未知の感染症であり、恐れる気持ちはよく分かります。正しく恐れましょうという綺麗事を言うつもりもありません。

医療崩壊を避けるという意味で感染者数を少なくする努力はすべきだと思います。しかしながら感染の可能性を0にするためなら全てを犠牲にするという態度はやはり変えていく必要があります。

医療を支えるには、そのための物品も必要です。サービスも必要でしょう。感染の可能性を少なくしながらも、社会生活を少しずつ取り戻していく必要があります。コロナが終わったら焼け野原になった、ではどうしようもありません。我々は日々働いて価値を生み出さなければいくらお金があったとしても手に入れられるものはありません。

緊急事態宣言中はこのまま過ごすしかしょうがないと思っていますが、この後どの様に行動するのかは今からよく考えておく必要があります。

通勤はどうするのか。会社の中での過ごし方。学校はどうするのか?通学はどうするのか?外食はどうするのか?娯楽や文化施設はどうするのか?一つ一つ解決していく必要があります。0か1ではないはずです。上手く付き合っていく方法について模索していってほしいと思っています。

それでは、皆さんも体に気をつけてお過ごしください。

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