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東京新聞に掲載されました

[2020.08.22]

少し前になりますが、8月14日の東京新聞に無症状の新型コロナウイルスPCR検査についてのコメントが掲載されました。

当院では以前より新型コロナウイルス抗体検査を行っておりました。抗体検査は基本的には過去に新型コロナウイルスに感染したかを判断するものです。

抗体検査を行う目的は当初は「以前高熱があったがインフルエンザの検査では陰性だった。あれは新型コロナウイルスだったのではないか?」という疑問に答える形で始まりました。しかし、その後「今感染しているのではないか?」「人に感染させるのではないか?」という不安のために受ける方が増えてきました。もちろん抗体検査は過去の感染を判断するものなので、「今感染しているのか」「人に感染させるのではないか」を判断することはできません。


現時点で新型コロナウイルスの診断はPCR検査がほぼ唯一の診断となっておりますが、鼻腔や咽頭からの検体採取はエアロゾルの発生のために感染防御が十分整っていない施設ではできません。しかし唾液のPCR検査が鼻腔や咽頭のPCR検査とほぼ一致することが報告され保険適応となったことで、エアロゾルの発生伴わない唾液の検体でのPCR検査を当院でも開始することとしました。

新型コロナウイルスのPCR検査には2つの側面があります

東京新聞の取材でコメントをいたしましたが、新型コロナウイルスのPCR検査には現在2つの側面があると考えています。

ひとつは診断目的のPCR検査です。これは通常の感染症の診断と同じで、発熱や感冒様症状の方の診断に用いる通常の考え方です。

もう一つは感染防御のためのPCR検査です。

例えば結核の場合、結核と診断されても患者さんが隔離される場合と隔離されない場合があります。
これは胃液や喀痰などで結核菌が排菌されている方は、まわりに感染させてしまうため患者さんも医療従事者もN95をつけて対応しますし、入院する病棟は陰圧管理ができる病棟になります。一方結核であっても胃液や喀痰などで排菌がなければ入院の場合も一般病棟で大丈夫です。

他にもMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)なども同じような対応をとることがあります。
施設などに入所したり(もしくは入院したりするとき)に、鼻腔などにMRSAがいる方はそれがなくなってからでないと入所できないことがあります。
これは本人が重篤な症状に感染をしていなくても高齢者や癌などの免疫力が低下している方にうつした場合に重篤な状態になるための対応です。

新型コロナウイルスの陽性者には無症状の方もいらっしゃるようですから、本人の病状が問題というよりは免疫力が低下した高齢者や悪性腫瘍などの治療中の方に感染させてしまうことが問題なのです。

このような「感染防御」のためのPCR検査は今後社会活動を維持するために必要なことだと思っています。

社会活動を続けることが必要です

現在新型コロナウイルスの第2波となっていると言われております。中国武漢で感染拡大した際には都市のロックダウンを行いそれが効果的であった印象があり、日本でもすぐに都市のロックダウンや緊急事態宣言を行うことを要求する風潮があります。
しかし、私はこの風潮には当初から反対です。このウイルスは確かに重篤な症状を起こす一面があるものの、全くの無症状ということも少なくありません。このような感染者とそうでないものを区別できないような感染症を完全に封じめることは不可能であろうと考えます。
たとえ日本で封じ込めに成功したとしても世界中で封じ込めに成功していなければいつでも感染流行のリスクにさらされます。

適切な感染対策をとりながら社会活動を行うことが今求められています。

ゼロリスクを求めるのは適切ではない

東北大学の押谷教授は先日の感染症学会で「全ての場でのゼロリスクを求めると、社会・経済活動の多くを著しく制限せざるを得ない。一部の国では少し感染者が出ると、全ての店を閉めるといったことをしているが、そうしたことを目指すのかは、社会的なコンセンサスが必要」と述べています。
現在新型コロナウイルスに感染することを恐れているのは、病状よりもその社会的な影響の多さでしょう。発生したら会社を閉める、事業所を閉鎖する、学校を休校するなどの処置がすべて必要なのか、よく考える必要があるでしょう。

感染症法 指定感染症 2類→5類へ

現在新型コロナウイルスは指定感染症となっており、感染症法の2類相当です。

1. 入院勧告、強制入院が可能になる
2. 対応する医療機関が指定される
3. 医療機関(医師)に報告義務が生じる
などの対応が必要となっています。診療費は公費でまかないますが、無症状の患者さんが多いのに入院勧告や膨大な事務的な対応が保健所の負担となっております。
今後現実的な対応として5類への格下げ?が必要となると考えます。

もちろん、クラスターが発生した際、また学校、会社等で陽性者が出た際の対応はある程度整備する必要はあると思います。

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