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新型コロナウイルス(COVID-19)のPCR検査について

当院では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のPCR検査は保険償還されたとしても、現時点(2020/2/29)では行いません。その理由は以下の通りです。

検査の精度に問題があります

新型コロナウイルスの診断には現在PCR法が採用されております。PCR検査の感度は様々な報告がありますが、概ね50(-70)%程度と推測されております。


感度90%とはウイルスに感染している100人中、90人診断を陽性と診断できる能力です。


新型コロナウイルスのPCR法は仮に50%とすると半分の人で見逃してしまうことになります。これが例えば100人の新型コロナウイルスの患者さんのうち50人を見落としてしまうことになります。この50人が実際には病気を持っているのに出歩いてまわりにうつしてしまうことは非常に問題だと思います。

感度をもっと良くすればいいということはありますが、これを90%にしても同様の問題は解決しません。(100%の検査はありません)

一方で感度をよくすると特異度が下がってきてしまうという問題があります。


特異度90%とはウイルスに感染していない100人中、90人を陰性と診断する能力です。


もし、90%の特異度があったとすると、実際には感染していない100人のうち10人が陽性と判断されてしまうのです(偽陽性といいます)。偽陽性の人はどうなるでしょうか?今の治療体制では隔離されてしまうのではないでしょうか?もし病院へ入院していたらどうでしょうか?陽性の人は、個室に入るか、他の陽性の人と同じ部屋に入れられてしまうのではないでしょうか?そうしたら本当はかかっていないのに実際に感染してしまうことになります。これは非常に問題です。

新型コロナウイルス感染の可能性が高い人にやるべきです

これを解決するには、やみくもに検査をするのではなく怪しい人(検査前確率が高い人)を検査するのが望ましいと考えます。


検査前確率とは検査する前に推測できる確率のことです。例えば高齢で咳や発熱がある人に胸のレントゲンを撮るのと、元気な中学生に胸のレントゲンを撮るのでは、肺炎を合併する頻度が全く違うことは分かると思います。


COVID-19の初期症状は一般の風邪症状と変わりないとされています。その時点で検査をするのは非常に確率が少ない人に検査をすることになりますので、陰性の患者さんが沢山出てきて検査の意味がなくなります。

検体採取時に感染する可能性があります

こちらの文献によると現時点では検体採取は鼻咽頭の検体採取が望ましいと考えられます。

鼻腔からの検体採取はインフルエンザの検体採取と同じです。みなさんもインフルエンザの検体採取の際に、咳き込んだりむせたりすることがあったと思います。新型コロナウイルスの感染力は現時点ではっきりと分かっていませんが、これまでの経過から相当強いことが予想されます。

そのためWHOや国際医療センターからも検体採取の際には、下記のような完全防護にて採取するようにされております。さらに陰圧室での管理も指導されています。

当院には陰圧室はもちろん、N95のマスクも下記のような完全防護服の用意もありません。

また、多くのクリニックでは検体採取の時間や場所を未感染者と分けることはできないと思います。院内で感染のリスクを高めることは、他の患者さんの感染リスクをあげることになります。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の特別な治療は現時点でありません

インフルエンザは例外的なウイルス感染症で、ワクチンやタミフルを始めとした治療薬があります。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は風邪など他の多くのウイルス感染症と同じように、特別な治療法はありません。ほとんどの人は自分の免疫力で治っていくものだと思われます。一部の重症化した患者さんには新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療というよりは、酸素投与をしたり合併した細菌感染や心不全や腎不全などに対して治療をしたりするものと思われます。

みなさんも風邪だからといってPCRして診断してほしいとは思わないと思います。診断したとしても基本的には症状を抑える薬を内服するくらいですから分かっていただけるものと思います。

莫大な手間と費用がかかります

私は実験が好きな医師ではありませんでしたが、大学院時代に一応基礎実験をしていたことがあります。RT-PCRもやったことがありますが、簡単にできるという代物ではありません。

もちろん昔と今とは全く違うとは思いますが、それでもコマーシャルレベルではないRT-PCRを容易に大量にできるとは考えられません。

すぐに大量にできるような体制を取れるように準備できていなかったのは今後の課題だとは思いますが、今現在できないことをマンパワーで乗り切ろうとするのはどうかと思います。

お金もマンパワーも限界がありますから、より有効性のある検査や治療に力を注ぐべきです。

かかったかもしれない人、軽症者はお願いだから家で休んでください

私は安倍首相が好きでもないし、今回の政治家や厚生労働省の対応には失望することが多かったのは事実です。

しかしながら現状では政府が示している方針に大きな間違いはないと考えています。

要するに「かかっているかもしれない人」「軽症者」は人にうつす可能性があるから出歩かないでほしい、とくに病院に来たり、人混みにでかけてうつすのは止めてほしい、ということなのです。

中国の新型コロナウイルスのデータを見てみると、武漢の死亡率が突出して高いことが分かります。北京や上海はそれほど高くないのです。このことから死亡率の違いはこのウイルスの病原性というよりは医療体制、マンパワーによるものと考えます。軽症患者が医療機関に殺到して医療崩壊を起こしてしまったことで、救える命を救えなかったことや、混雑した病院で本来感染してなかった人たちに感染してしまったことが原因と推測されます。

軽症者ほどうつしやすいのかもしれません

「コロナにかかっていないことを証明してほしい」という会社員がいると聞いたことがあります。会社から言われたのか、上司に言われたのか分かりませんが、コロナでなければ出勤してほしいということなのでしょうか?

もちろんそんなことはこれまで述べてきたように不可能です。

さらに今回の新型コロナウイルスの特徴として、上気道でウイルスが増殖するタイプと肺でウイルスが増殖するタイプがあるようです。上気道でウイルスが増殖するタイプは症状が軽いが、咳やくしゃみなどで人にうつす可能性が高いのです。一方で肺で増殖するタイプは症状が重いが、人にうつすリスクは低いと考えられます。もちろん重症者は人工呼吸器管理になると肺からの体液が直接外へ放出されるために医療従事者が感染するリスクが高まります。

PCR検査は重症者を治療する病院で検査をすべきです

これまで述べてきたように私は当院で新型コロナウイルスのPCR法による診断は、保険償還となっても行いません。

一方で重症者を治療する病院では検査ができるような体制を整えるべきだと思います。大学病院でも下記のように場所を分けて検査をすることを考えているようです。一般のみなさんが考えるほど気楽に検査ができるものではないと思っています。ご理解をよろしくお願い申し上げます。

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