睡眠時無呼吸症
睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)とは、睡眠中に呼吸が繰り返し止まったり、 浅くなったりする病気です。睡眠中に呼吸が止まると、体に取り込まれる酸素の量が少なくなり、 さまざまな臓器に負担がかかります。また、睡眠が何度も中断されるため、 日中の強い眠気や集中力の低下を引き起こし、仕事や学業、運転などの社会生活にも影響します。
睡眠時無呼吸症は、肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病だけでなく、 心房細動などの不整脈、狭心症、心筋梗塞、心不全、脳卒中などの循環器疾患とも 深い関わりがあることが分かっています。
日本で睡眠時無呼吸症が広く知られるきっかけの一つとなったのが、 2003年2月に起きたJR山陽新幹線の居眠り運転事例です。 運転士が眠ったまま新幹線が走行し、後に運転士が睡眠時無呼吸症候群であったことが分かりました。
睡眠時無呼吸症の影響は、運転中の眠気だけではありません。 大切な会議中や授業中にも強い眠気に襲われることがあり、 仕事や勉強への意欲低下、集中力・記憶力の低下につながる場合があります。 本人の努力不足や性格の問題と誤解されることもありますが、治療が必要な病気である可能性があります。
睡眠時無呼吸症の症状
睡眠時無呼吸症では、次のような症状がみられます。
眠っているとき
- 大きないびきをかく
- 睡眠中に呼吸が止まると指摘される
- 呼吸が乱れる、あえぐような呼吸をする
- 息苦しさや窒息感で目が覚める
- 夜中に何度も目を覚ます
- 夜間に何度もトイレへ行く
- 寝汗をかく
朝起きたとき
- 熟睡した感じがしない
- 口や喉が渇いている
- 起床時に頭痛がする
- 十分寝たはずなのに疲れが残る
日中、起きているとき
- 強い眠気がある、しばしば居眠りをする
- 記憶力や集中力が低下する
- 疲労感や倦怠感が続く
- 意欲が低下する
- いらいらしやすいなど、性格が変化したように感じる
- 性欲が低下する
- 体を動かしたときに息切れする
これらは睡眠時無呼吸症でみられる症状です。 一つでも心当たりがある場合や、ご家族からいびき・無呼吸を指摘された場合は、 医療機関へご相談ください。
ESSスコア(眠気の評価)
ESS(Epworth Sleepiness Scale)は、日中の眠気の程度を確認するための質問票です。 以下の8つの状況について、居眠りをしてしまう可能性を0~3点で選択してください。 実際に経験したことがない状況は、同じ状況になった場合を想像してお答えください。
0点=居眠りすることはない
1点=居眠りすることが時々ある
2点=居眠りすることがよくある
3点=ほとんどいつも居眠りする
11点以上では、睡眠時無呼吸症を含む睡眠障害が疑われます。 ただし、睡眠時無呼吸症があっても日中の眠気を自覚しない方もいるため、 点数が低いだけでは睡眠時無呼吸症を否定できません。 大きないびき、睡眠中の無呼吸、起床時の頭痛、高血圧などがある場合はご相談ください。
※このチェックは診断に代わるものではありません。
睡眠時無呼吸症の検査
簡易睡眠検査
自宅で、普段と同じように眠りながら行う検査です。 手の指や鼻の下などにセンサーを装着し、呼吸の状態、いびき、血液中の酸素飽和度などを測定します。 これにより、10秒以上続く無呼吸・低呼吸が1時間当たり何回あるかを示す AHI(無呼吸低呼吸指数)や、睡眠中の酸素低下の程度を評価します。
当院では検査会社と連携し、患者様のご希望に合わせて検査日程を調整しています。 検査終了後、当院で結果をご説明します。 簡易睡眠検査で睡眠時無呼吸症の可能性が高いものの、 診断や治療方針の決定にさらに詳しい評価が必要な場合は、 終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG検査)を行います。

簡易無呼吸症検査
終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG検査)
PSG検査は、睡眠時無呼吸症を詳しく調べるための精密検査です。 脳波、眼球運動、筋電図、心電図、呼吸、いびき、血液中の酸素飽和度、体位などを測定します。 AHI、酸素低下の程度、実際の睡眠時間や睡眠の質、不整脈の有無などを総合的に評価します。
PSG検査は一般的には1泊入院で行われますが、当院では検査機関と連携し、 ご自宅で行う在宅PSG検査にも対応しています。 自宅の寝具を使用して普段に近い環境で検査できること、 入院費用がかからないこと、日程を調整しやすいことなどが利点です。
入院での検査が適している場合や、入院検査をご希望の場合は、 専門医療機関をご紹介しますのでご相談ください。

睡眠時無呼吸症の治療
閉塞性睡眠時無呼吸症の主な治療には、 CPAP療法、口腔内装置(マウスピース)、生活習慣の改善などがあります。 重症度、原因、体格、症状、合併症などを考慮して治療法を選択します。
CPAP療法
CPAP(シーパップ:持続陽圧呼吸療法)は、 鼻または鼻と口を覆うマスクから空気を送り、 睡眠中に上気道が塞がるのを防ぐ治療です。 閉塞性睡眠時無呼吸症に対する標準的な治療であり、 とくに中等症から重症の方に高い効果が期待できます。
保険診療でCPAPを導入する際は、検査方法とAHIなどに基づく一定の基準があります。 一般に、簡易睡眠検査ではAHI 40以上、 PSG検査ではAHI 20以上が保険適用の目安となります。 検査結果や症状を確認したうえで、適応を判断します。
使用開始直後は、マスクや空気圧に違和感を感じる場合があります。 マスクの種類や装着方法、空気圧、加湿設定などを調整しながら継続することが大切です。 適切に使用することで、いびき・無呼吸や日中の眠気が改善し、 高血圧などの合併症リスクの軽減も期待できます。

口腔内装置(マウスピース)
睡眠時無呼吸症に対して、口腔内装置による治療を行う場合があります。 スリープスプリントとも呼ばれ、下あごを前方へ移動させた状態で固定することで、 上気道を広く保ち、いびきや無呼吸を減らす治療法です。
一般的には軽症から中等症の閉塞性睡眠時無呼吸症に用いられます。 作製は睡眠時無呼吸症の口腔内装置に対応する歯科医療機関へ依頼します。
生活習慣の改善
減量
肥満が睡眠時無呼吸症の原因または悪化要因となっている場合は、 減量によって無呼吸が改善する可能性があります。 急激な減量ではなく、食事と運動を組み合わせて無理なく継続することが大切です。
寝る姿勢の工夫
仰向けでは舌が喉の奥へ落ち込み、気道が狭くなって無呼吸が悪化することがあります。 横向きで眠ると無呼吸が減る方もいます。 ただし、体位療法だけでは十分に改善しない場合もあります。
飲酒・睡眠薬への注意
アルコールや一部の睡眠薬には筋肉を緩める作用があり、 上気道が塞がりやすくなるため、無呼吸を悪化させる場合があります。 飲酒量や服薬については自己判断で変更せず、医師へご相談ください。

睡眠時無呼吸症の合併症
睡眠時無呼吸症と生活習慣病・循環器疾患
睡眠時無呼吸症には、さまざまな生活習慣病や循環器疾患が合併します。 睡眠中に低酸素状態を繰り返すことや、睡眠が何度も分断されることによって、 交感神経が過剰に働き、血圧上昇、血管への負担、炎症、代謝異常などが起こると考えられています。
睡眠時無呼吸症に合併する疾患
睡眠時無呼吸症と関連する主な病気には、次のようなものがあります。
- 高血圧、治療抵抗性高血圧
- 心房細動などの不整脈
- 狭心症、心筋梗塞などの虚血性心疾患
- 心不全
- 脳梗塞などの脳血管疾患
- 糖尿病、耐糖能異常
- 脂質異常症
- 肥満、メタボリックシンドローム
とくに、複数の降圧薬を使用しても血圧が十分に下がらない方、 夜間や早朝の血圧が高い方、心房細動を繰り返す方、心不全のある方では、 睡眠時無呼吸症が隠れていることがあります。
睡眠時無呼吸症と生活習慣病のリスク
睡眠時無呼吸症を放置すると、生活習慣病や循環器疾患の発症・悪化に関与する可能性があります。 適切に診断し、重症度や原因に応じた治療を続けることが重要です。 いびきや日中の眠気がある方だけでなく、 高血圧、心房細動、心不全、糖尿病などで治療中の方も、気になる場合はご相談ください。
