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心房細動

心房細動はその名前の通り、心房が細かく震えるように痙攣し、不規則な脈拍になることをいいます。心房細動は高齢になるにつれて発症し80歳以上では2-5%程度の人に見られると言われています。心房細動は不整脈が起こったからといってすぐに命に関わるものではありませんが、下記に示すように生活の質に大きな影響を与える可能性のある脳梗塞の発症リスクが増えることが知られております。

正常な心臓の収縮

下の図は心臓が正常に動くときの模式図です。正常な心臓では右心房の上にある洞結節というところから電気が発生し、房室結節というところを通ってから、右心室と左心室にある電線みたいな線維を通って電気が流れて収縮したり、拡張したりしています。正常な心臓では心臓が1分間に60-80回収縮しています。もちろん運動したりすると脈拍があがりますが、せいぜい150-180くらいまでしか脈があがりません。

心房細動での心臓の収縮

心房細動では心房が異常な興奮をして、1分間に300-500回ほど細かく震えてしまいます。これが心房細動です。もちろん1分間に300-500回も興奮すると心臓は疲れてしまいますので、実際にはその5分の1や4分の1が心室に伝わるので、脈拍は80-100程度くらいになります。しかしながらその伝わり方は一定ではありませんので脈がバラバラになってしまうのです。

また、運動したり何かのひょうしに伝わり方がよくなってしまうと脈拍がいっきに200くらいまで上昇してしまいます。そうすると心臓が勝手に全速力で走っているような状態になりますので、ドキドキしたり苦しくなってしまいます。これが長い間続くと実際に心臓に負荷がかかりすぎて心不全になってしまう人もいるのです。

心房細動の症状は?

心房細動では、ドキドキする、息切れ、めまい、疲労感などの症状があらわれることがあります。しかし、無症状のことも多く、定期健診の心電図検査などで初めて見つかる場合も少なくありません。

心房細動と脳梗塞

しかし、心房細動の一番の問題は心房の左心耳というところに血栓ができてそれが飛んでいって脳梗塞になってしまうことなのです。下図参照。

心房細動による脳梗塞は大きな脳梗塞となることが多く、これが非常に問題なのです。要するに半身麻痺、寝たきり、そしてひどい場合には死に至る場合もあるのです。

 

 

脳梗塞の危険度について

患者さんには様々な背景因子があり、その背景によって塞栓症のリスクが異なります。まず、リウマチ性僧帽弁疾患・僧帽弁狭窄症・人工弁(機械弁および生体弁)置換術後の弁膜症性心房細動とそれらを有さない非弁膜症性心房細動では塞栓症のリスクが異なります。さらに非弁膜症性心房細動においても、心不全(Congestive heart failure)、高血圧(Hypertension)、年齢(Age)≧75、糖尿病(Diabetes mellitus)、以前の脳梗塞/一過性脳虚血発作(Stroke/TIA)といった因子は脳梗塞の発生率を上昇させる因子であり、それらが累積するとさらに脳梗塞が起こりやすいことが知られています。特に脳梗塞/一過性脳虚血発作を一度きたした患者さんでは他の因子の脳梗塞年間発症率が5-8%/年であるのに対して、12%/年とより高いことが分かっています。

そのため前4つの因子を有した場合は各1点を、脳梗塞/一過性脳虚血発作をきたした場合は2点と合算して、各々の頭文字をとってCHADS2スコアとされました(表1)。このCHADS2スコアは脳梗塞の年間発症率とよく相関するため簡便で有用な指標として、非弁膜症性心房細動における脳梗塞のリスク評価として用いられています。

表1 CHADS2スコア(文献1より改変)

 

CHADS2スコアは簡便であることから、脳梗塞のリスク評価として専門外の医師でも非弁膜症性心房細動における抗凝固療法の適応を考慮する上で非常に有用です。しかしながら、非弁膜症性心房細動の大半はCHADS2スコア1点以下の患者さんであり、リスクとしては低いものの絶対数が多いため脳梗塞をきたす患者数としてはかなりの割合を占めています。そのため、こうした患者さんの脳梗塞を予防することが重要です。CHADS2スコアで用いられる危険因子以外にも、心筋症、年齢(65-74歳)、心筋梗塞の既往、大動脈プラーク、血管疾患、性別(女性)等が報告されていることから、CHADS2スコアだけでは脳梗塞のリスクを評価できない年齢(65-74歳)、心筋梗塞の既往などの血管疾患合併例、女性(器質的心疾患を有さない65歳未満の女性は計算されない)をそれぞれ1点とし、75歳以上の年齢ではリスクがさらに高まることを考慮して2点として計算されるCHA2DS2-VAScスコアが提唱されました(表2)。

表2 CHA2DS2-VAScスコア(文献2より改変)

心房細動による脳梗塞の予防について

上記のCHADS2スコアないし、CHA2DS2-VAScスコアにて脳梗塞の危険が高いと判断された場合には内服薬を服用します。内服薬には下記の主に三種類があります。どの内服薬が患者様にあっているかは、年齢、性別、腎機能、併用薬剤など様々な要因で決まりますので、主治医の先生と相談して決めてください。

(1)ビタミンK拮抗薬(ワーファリン)

(2)直接トロンビン阻害薬(ダビガトラン)

(3)第Xa因子阻害薬(リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン)

 内服以外の脳梗塞の予防について

 内服薬以外の脳梗塞の予防法としては胸腔鏡下左心耳切除や左心耳にデバイスを留置する左心耳閉鎖治療などがあります。(下図参照)

 

c 2019 Boston Scientific Corporation. All rights reserved

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 心房細動の治療について

心房細動そのものの治療法には大きく分けて二つの方法があります。一つは①レートコントロール法(心拍数コントロール)、もう一つは②リズムコントロール法(洞調律維持)です。

①レートコントロール

レートコントロールとは心房細動調律のままで心拍数をコントロールし、速くなりすぎないようにする治療法です。β遮断薬、Ca拮抗薬、ジキタリス製剤などが使用されます。これにより動悸感が軽減して楽になります

②リズムコントロール

リズムコントロールとは心房細動を停止させて洞調律へもどす治療法です。心房細動を停止および抑制するには抗不整脈薬、電気ショック、カテーテルアブレーションなどを行います。

実はレートコントロールとリズムコントロールの優劣はありません。2002年に発表されたAFFIRM(Atrial Fibrillation Follow-up Investigation of Rhythm Management)試験(Wyse DG, et al. N Engl J Med 2002;347:1825-33)ではレートコントロールとリズムコントロールで総死亡率や心血管イベントに差はありませんでした。このため、どちらを選択するかは患者背景によって異なるのが実情です。

 

心房細動のカテーテルアブレーションについて

カテーテルアブレーションとは、カテーテルという細い管を足の付け根から血管(静脈)を通じて心臓に入れ、心房細動の原因を発する部位にやけどを作る(焼灼する)ことで、異常な電気信号の流れを遮断(アブレーション)します。
近年、心臓の 4つの部屋(P2 参照)のうち左上の部屋(左心房)につながる4 本の肺静脈から発生する異常な電気信号が、心房細動のおもな引き金になっていることが明らかになりました。心臓に管を入れる、といっても、カテーテルを入れる部位に数ミリほどの小さな傷がつく程度のため、胸を切り開く必要がなく患者さんの身体への負担が少ないとされています。ただし、患者さんの状態によって、複数回の治療が必要な場合もあります。カテーテルアブレーションには、使用するエネルギー源や形状の違いによって、いくつか種類があります。まず、高周波電流を使って心房細動の原因発生部位を焼く方法と、冷却剤を使って原因発生部位を凍結させる方法があります。また、形状にも大きく2 種類あり、先端に金属の電極がついた電極カテーテルや、先端にちいさな風船がついたバルーンカテーテルがあります。

どのような治療を行うかは患者さんの肺静脈の大きさなどを測定して決定いたします。心房細動のカテーテルアブレーションは専門の病院、施設がありますので、必要な方はご紹介させていただきます。

 

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