睡眠時無呼吸症候群(SAS)と高血圧の関係〜見逃してはいけない隠れたリスク〜
睡眠時無呼吸症候群(SAS)と高血圧の関係
〜見逃してはいけない隠れたリスク〜
1. 症状
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が何度も止まる病気です。
この病気は、単に「いびき」や「日中の眠気」を引き起こすだけではありません。
特に重要なのは、高血圧と深い関係があることです。
SASに関連する主な症状には以下が挙げられます。
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大きないびき
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睡眠中に呼吸が止まる(家族に指摘されることが多い)
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起床時の頭痛、だるさ
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日中の強い眠気、集中力低下
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夜間頻尿(夜中に何度もトイレに起きる)
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高血圧がなかなかコントロールできない
特に、
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早朝から血圧が高い
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夜間も血圧が下がらない
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通常の降圧薬だけでは血圧が改善しにくい といった特徴を持つ高血圧の方は、SASの存在を疑う必要があります。
2. メカニズムと診断法
SASが高血圧を引き起こすメカニズム
睡眠中に無呼吸が起こると、血液中の酸素濃度が低下します。
その結果、体は交感神経を刺激して血圧を上昇させ、酸素供給を維持しようとします。
これが何十回、何百回も一晩中繰り返されることで、次第に血圧が慢性的に高くなってしまいます。
さらに、
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低酸素状態による血管内皮機能障害
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レニン・アンジオテンシン系の活性化(血圧上昇ホルモン)
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覚醒反応による交感神経過活動 など、複数の要因が重なって血圧が持続的に高くなります。
診断法について
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問診・症状の確認
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いびき、無呼吸、日中の眠気、夜間頻尿、高血圧のコントロール不良などを詳しく伺います。
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睡眠検査(簡易検査・ポリソムノグラフィー)
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専用の機器で睡眠中の呼吸状態、酸素濃度、心拍数などを測定し、無呼吸・低呼吸の程度を評価します。
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24時間自由行動下血圧測定(ABPM)
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当院では、より詳しい評価のために**ABPM(エービーピーエム)**を実施することができます。
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ABPMでは、日中と夜間を通じて30分ごとに血圧を自動測定し、夜間血圧の低下パターンや早朝高血圧を正確に把握します。
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SASがある場合、夜間血圧が下がらない(non-dipper型)、あるいは**夜間に血圧が上がる(riser型)**といった異常パターンが見られることが多く、診断の手がかりになります。
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3. 治療法
睡眠時無呼吸症候群(SAS)に伴う高血圧の治療では、
「高血圧だけを薬で抑える」のではなく、「SASそのものを治療する」ことが最も重要です。
SASの治療
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CPAP療法(シーパップ療法)
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鼻に装着するマスクから空気を送り込み、気道の閉塞を防ぐ治療法です。
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CPAPにより無呼吸が改善されると、夜間血圧も自然に下がり、高血圧の改善が期待できます。
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減量
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肥満はSASの大きなリスク因子です。適正体重を目指すことが重要です。
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生活習慣の見直し
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禁酒(特に寝酒は避ける)
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禁煙
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仰向け寝を避ける(横向きで寝る工夫)
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高血圧の治療
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SASの治療と並行して、必要に応じて降圧薬を用いて血圧を管理します。
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特に夜間血圧が高い場合は、夜間服薬(夜に薬を飲む)など、血圧のリズムに合わせた細やかな治療調整を行います。
まとめ
・ 睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、高血圧の原因となり得る重要な病気です。
・ 夜間血圧異常(non-dipper型、riser型)が見られる場合は、SASの可能性を考える必要があります。
・ 当院では、ABPMを用いた詳細な血圧評価と、適切な睡眠検査によるSAS診断・治療を行っています。
・ SASを適切に治療することで、高血圧だけでなく、将来の心筋梗塞や脳卒中のリスクも大きく減らすことが可能です。
高血圧がなかなか治らない方、朝から血圧が高い方、いびきや日中の眠気が気になる方は、ぜひ一度ご相談ください。