糖尿病内科
糖尿病とは
糖尿病とはインスリンの作用不足による慢性的な高血糖を主徴とする疾患をいいます。糖尿病には1型糖尿病、2型糖尿病とその他の特定の機序、疾患によるもの、妊娠糖尿病と主に4つに分類されます。1型糖尿病ではインスリンを合成・分泌する膵ランゲルハンス島β細胞の破壊・消失によるインスリン作用不足が主な原因です。2型糖尿病はインスリンの分泌低下やインスリン抵抗性をきたす素因を含む複数の遺伝因子に過食、運動不足などの環境因子が加わり発症します。
インスリン
インスリンは膵臓のランゲルハンス島β細胞で生成、分泌され、肝臓に達し全身に送られます。インスリン感受性のある肝臓、筋肉や脂肪組織などで細胞膜上にあるインスリン受容体に結合し、ブドウ糖の細胞内への取り込み、エネルギー利用や貯蔵、蛋白の合成、細胞の増殖を促進します。
高血糖
高血糖が続くと、口渇、多飲、多尿、体重減少、易疲労感などを呈するが、それ以外の症状が呈さないこともあり、病識が全く無い場合もあります。しかし急激な血糖の上昇によりケトアシドーシス、高度脱水から昏睡をきたすこともありえる。
慢性的な高血糖
慢性的な高血糖は、網膜や腎臓の細小血管および全身の動脈硬化を悪化させます。さらに神経障害、白内障などの合併症を起こし生活の質を著しく落とす場合がある。
糖尿病に関する指標
平均血糖値を反映する指標
HbA1c (hemoglobin A1c, グリコヘモグロビン)
ヘモグロビンA0の安定型糖化産物であるHbA1cの値は、採血時から過去1-2ヶ月の平均血糖値を反映し、糖尿病の診断に用いられ、また血糖コントロールの指標ともなります。基準値は4.6-6.2%ですが、赤血球寿命との関連があり、出血、鉄欠乏性貧血、肝硬変などで低値をとるので注意が必要です。
グリコアルブミン
グリコアルブミンは過去2週間の平均血糖値を反映します。糖尿病性腎症によるネフローゼ症候群などタンパク質が失われる疾患では低値となるので注意が必要です。
1,5-AG
1,5アンヒドログルシトールは糖代謝状況の急激な変化を反映し、尿糖の排泄量と相関して低下します。よって血糖値が上昇すると低値をきたします。アカルボースやSGLT2阻害薬内服中には平均血糖値と比べて異常低値をとるので注意が必要です。
インスリン分泌能の指標
膵β細胞からのインスリンの分泌には空腹時の基礎分泌と食物摂取による血糖値や消化管ホルモンの上昇により分泌能が増加する追加分泌があります。1型糖尿病では両者とも低下・消失しており、2型糖尿病では主に追加分泌が遅延低下しています。
糖尿病患者では75gOGTTで負荷後30分で血中インスリン増加量を血糖値の増加量で除した値をインスリン分泌能指数(insulinogenic index)といい、インスリン追加分泌のうち初期分泌能の指標となります。
空腹時の血中Cペプチド値と24時間蓄尿尿中Cペプチド排泄量はインスリン分泌能の指標であり、前者が0.6 ng/ml未満、後者が20 μg/日以下であればインスリン依存状態の目安となります。
インスリン抵抗性の指標
・インスリン抵抗性とは血中のインスリン濃度に見合ったインスリン作用が得られない状態をいいます。
・早朝空腹時に血中インスリン値が15μU/ml以上をしめす場合には明らかなインスリン抵抗性が考えられます。
・インスリン抵抗性の簡便な指標の一つとして早朝空腹時の血中インスリン値と血糖値から計算されるHOMA-IRは2.5以上でインスリン抵抗性があると考えられます