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ショパン国際ピアノコンクール

[2020.11.23]

ショパンコンクール2021が始まりました。ライブはこちらから。

今年は本来であれば2020年東京オリンピックが開かれるはずでしたが、新型コロナウイルス感染症のために来年へ延期されました。同じように来年へ延期されたものとして有名な国際的なイベントとして「ショパンピアノコンクール」があります。ショパンコンクールは5年に一度開かれる国際ピアノコンクールで、前回は2015年10月に行われ韓国人として初めてチョ・ソンジンが優勝したのは記憶に新しいところです。

チョ・ソンジン

ショパンピアノコンクールはこれまでそうそうたるピアニストを輩出してきました。とくに有名なのは1960年に優勝したマウリツィオ・ポリーニ(イタリア)や1965年のマルタ・アルゲリッチ(アルゼンチン)などでしょうか?我々の親の世代にとってはポリーニが何といっても有名ですが、我々の世代では1985年に優勝したブーニン(ソ連)が有名です。

マウリツィオ・ポリーニ

マルタ・アルゲリッチ

当時テレビでも取り上げられたためにブーニン現象として騒がれ、直後の日本公演ではチケット争奪戦となりました。ちなみにミーハー?な私たち一家は、武道館でのコンサートのチケットを手に入れることができて無事にブーニンの演奏を見に行くことができました。演奏についてはあまり覚えていませんが、武道館の真ん中のステージが花に囲まれていて特別なコンサートであったことはよく覚えています。

スタニスラフ・ブーニン

さて、ショパンコンクールは三大ピアノコンクールの一つで、その他の2つはチャイコフスキー国際コンクール、エリザベート王妃国際音楽コンクールが挙げられます。日本では他の2つに比べてショパンコンクールの知名度は抜群だと思われます。その理由ははっきりとは分からないのですが、日本人がショパンを大好きなことや、これまでもコンクールの様子などをNHKなどで繰り返し放送されていること、ピアニストといえば大変有名であった中村紘子さんが1965年に第4位に入賞されたことなどから他のコンクールに比べて突出して有名になっているのかもしれません。

中村紘子

ちなみに、チャイコフスキー国際コンクールは上原 彩子さんが2002年に優勝していますが、ショパンコンクール、エリザベート王妃国際音楽コンクールの両方とも日本人のピアニスト優勝者はおりません。(ヴァイオリンではチャイコフスキーコンクール、エリザベートコンクール両方とも優勝者あり)

最近はコンクールの様子がNHKで放送されるので楽しみにしていますが、前回2015年のショパンコンクールはYouTubeでライブ放映されていましたので臨場感をもってコンクールを楽しむことができました。

また、NHKで放送された「もうひとつのショパンコンクール~ピアノ調律師たちの闘い~」という番組も興味深く拝見しました。

これはショパンコンクールに参加しているピアノメーカーと調律師たちの闘いのドキュメントでした。前回のショパンコンクールではスタインウェイ、ヤマハ、カワイ、ファツィオリという4つのメーカーがコンクールに参加していました。この4つのメーカーのどのピアノを使用するかは演奏者の自由です。その中で演奏者に選ばれて優勝すればメーカーにとっては大変な名誉なことになりますし、その後の販売にも影響してくるでしょう。

ヤマハ、カワイは言わずと知れた日本のメーカーですが、スタインウェイは古くからあるドイツのメーカー、ファツィオリはイタリアの新しいメーカーです。ヤマハ、カワイの調律師はもちろん日本人ですが、ファツィオリはイタリアのメーカーながら調律師は日本人でした。よってスタインウェイをのぞく3つのメーカーは日本人がピアノを調整していたのです。

ピアノの王者といえば何といってもスタインウェイであり、コンサートピアニストの多く(9割以上)はスタインウェイのピアノを使いコンサートを行っています。ですからショパンピアノコンクールでもほとんどの優勝者はファイナルではスタンウェイのピアノを使用してきており、2015年に優勝したチョ・ソンジンもスタインウェイを使用していました。しかし、2015年はヤマハも大健闘で、入賞者6名のうち3名がヤマハを使用していました(カワイ、ファツィオリは0)。

 

テレビ番組によると面白いことにヤマハの調律師たちは会場で演奏を聴きながらもYouTubeの演奏を聴き(見)直して音作りをしていたのです。ネットだと音の特徴がはっきりして聴こえるというのです。今の時代にあったやり方でやっているのだと感心しました。さらに驚いたことに、審査員もYouTubeで自分の評価が正しかったのか再確認しているとの記事も目にしたことがあります。審査員までYouTubeをチェックするとはYouTubeの威力たるや凄まじいものがあります。

ところで皆様はピアノって機械みたいに思っていませんか?よく目にするピアノの多くは黒いので、何だかプラスチックや鉄などからできていて音が出ているような印象がありますよね。最近ではプラスチックでできた電子ピアノも多いので、ますます区別がつきにくくなっています。

実をいうと、私は母親がピアノ教師でありながら、大人になるまでピアノにはあまり興味がなく、弾こうという気もありませんでしたし、小さいころから習っていたヴァイオリンほど積極的に聴きに行くこともありませんでした。
私がピアノに興味を持つようになったのは娘がピアノを習うようになってからです。ピアノが奏でる音楽のすばらしさだけでなく、楽器自体に次第に魅せられてきたのです。

ピアノはあの木枠の中に響板という板があり、響板の上にはハープのように弦が張ってあり、最終的にはこれを振動させることで音を作るという楽器なのです。それを考えると自分がよく理解している?ヴァイオリンと同じような構造なのです。

ピアノの響板

世界にはこれまでにも多くのピアノメーカーがありましたが、多くの魅力的なメーカーはすでにありません。例えばショパンが愛用したことで知られる「プレイエル」、ベートーヴェンが使用していたことがある「エラール」などはすでにピアノ製造を行っていません。日本でもかつて数多くのメーカーがピアノ製造をしていたようですが、現在ではほとんど生産していません。

最近はご多分に漏れず?、多くの中国メーカーがピアノを製造しているようです。その中にはかつてヨーロッパで生産されていたメーカーから名前を借りて生産されているものもあるようで、名前だけでは生産国を判断できないところがあるようです。

さて、2015年のショパンコンクールでは韓国人の優勝者でしたが、その他にも多くのアジア系の入賞者がおりました(国籍はさまざま)。そろそろ日本人の優勝者が出てもいいようにも思いますが、一方で日本では以前ほどピアノ学習熱が盛んではないようにも思いますのでなかなか難しいのかもしれません。しかし、1980年にアジア人で初めて優勝したダン・タイ・ソンはベトナム出身ですので彼のような天才は国籍とはあまり関係ないのかもしれません。

ダン・タイ・ソン

来年に延期されたショパンコンクールでは、かつて天才少年と言われた牛田智大さんや、すでにピアニストとして活動している反田恭平さんらが参加する予定だと報道されています。いっぽうで個人的にはかなりの大物だと思っている2019年のチャイコフスキーコンクール第2位の藤田真央さんはエントリーミス(忘れていた!?)で参加できないとのことです。

前回優勝のチョ・ソンジンは自分としてはかなり好みのピアニストでした。技術的に極めて余裕があり、これ見よがしの演奏しないこと、理にかなった弾き方(指使いなどが無理がない)をしていることなどが好印象でした。ミスをしない演奏というとすぐにつまらない演奏と結びつけることもありますが、技術的に余裕があると自らの表現にも集中できるように思いました。

1年前に優勝直後の彼のピアノリサイタルに行きましたが丁寧な弾き方、音もきれいで、全体として繊細ながらも力強さもあり是非また行ってみたいと感じさせるピアニストでした。

もちろんコンクールで優勝するということと芸術の道を究めるということはまた別のことだと思いますので、演奏者はコンクールだけでなく常に演奏会でベストを尽くしてほしいと思っています。

1年延期された来年のショパンコンクールからどんなピアニストが出てくるのか楽しむとともに、どのピアノメーカーが演奏者から選ばれるのかも注目したいと思っています。

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