風邪に抗生剤は効きません
「風邪に抗生剤は効きません!」というと患者さんの中には驚く人もいれば、すでによく知っている人もいます。こちらのホームページにはその説明が詳しく載っておりますので、ご興味のある方は是非御覧ください。
毎年11月は、「薬剤耐性(AMR)対策推進月間」です
そのHPにも書いてあるように11月はAMR対策推進月間なんだそうです。AMR(Antimicrobial Resistance)とは日本語で薬剤耐性のことです。AMRについて簡単に説明いたします。
抗菌薬は風邪に効かないということは医師の世界では常識なのですが、一般の方々には風邪には抗菌薬が効くという思い込みがあり、医師に抗菌薬の処方をお願いするという傾向がありました。風邪と思われる症状の中には、溶連菌感染症など確かに抗菌薬が必要な病気があることも事実であり、医師の方も患者さんが希望するならということと、限られた診療時間の中で説明することができないということもあり、ズルズルと処方するという悪循環が繰り返されていたように思います。個人的には明らかな単なる感冒症状に抗生剤を処方されている医師の処方箋をみると、この医師は大丈夫なんだろうかと思う一方で、患者さんに強く言われたら自分も処方せざるを得ないといった相反する気持ちが交錯します。
しかしながら抗菌薬の乱用により、抗菌薬が効かないAMR(薬剤耐性)をもつ細菌が世界中で増えています。これは、病院をはじめとした医療機関内でも、また医療機関の外の市中でも問題となっています。また、動物のもっている薬剤耐性菌が畜産物や農産物を介して人に広がったり、環境が汚染される場合もあることが分かってきました。抗菌薬が効かない薬剤耐性菌が増えると、これまでは適切に治療をすればよかった感染症の治療が難しくなってしまいます。重症化しやすくなり、死に至る可能性が高まります。加えて新しい抗菌薬の開発は進んでおらず、薬剤耐性菌による感染症の治療はますます難しくなってきています。このような状況を踏まえて、WHO(世界保健機関)では、2015年5月に「薬剤耐性に関するグローバル・アクション・プラン」が採択され、加盟国は2年以内に自国のアクション・プランを策定するよう要請されました。日本では、2016年4月に「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン 2016-2020」が取りまとめられました。この取組により、医師の方から患者さんへ説明することが容易になりました。
風邪に抗菌薬が効かないメカニズムについて
風邪は、主にウイルスが鼻やのどにくっついて炎症を起こし、くしゃみ、鼻水、せき、たん、のどの痛み、発熱などがでることを言います。この、「風邪の原因はウイルス」というのが大切なポイントです。風邪の原因は細菌ではないのです。風邪の症状はいずれも、あなたの体がウイルスと戦っているサインです。抗菌薬は細菌の壁を壊すのに効きます。そのため肺炎などの細菌感染には抗菌薬は効きます。一方で、ウイルス感染が主体の風邪には抗菌薬は効きません。
インフルエンザなどの特殊なウイルス感染を除いて、ウイルス感染症は自分の免疫力で治すのが基本です。風邪薬は症状を抑えるために使用します。
適切な抗菌薬の使用にご協力ください
AMRは自分だけの問題ではありません。世界で取り組まなければいけない問題です。是非抗菌薬の適正な使用にご協力ください。
最後に、AMRのサイトにあった面白い川柳を載せておきます。