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クリニック通信1月号

[2025.01.05]

あけましておめでとうございます。
皆さま年末年始はどのように過ごされましたか?帰省されたり旅行された方もいらっしゃるかもしれませんが、紅白歌合戦や箱根駅伝などテレビ三昧のお正月を過ごされた方も少なくないかと思います。
テレビといえば昨年のNHK大河ドラマ『光る君へ』は私にとっては大変印象深いものでした。『光る君へ』は紫式部と藤原道長の生涯を描いた壮大な物語でしたが、紫式部の文学的な才能がどのように養われていったのか、宮廷生活における様々なできごと、そして『源氏物語』が誕生するまでの過程が、美しい映像と繊細な演出で表現され、視聴者を雅な平安の世界にいざなう秀逸なドラマ作品でした。

このドラマの面白さは、なんといっても創作部分を含め脚本の素晴らしさにあると思います。紫式部の世界を丹念に描き出し、初恋の人との絆やその喪失から始まり、彼女が愛を原動力として不朽の文学『源氏物語』を生み出す過程とその後変わっていく愛の形や人生の意義、当時の時代背景が様々な登場人物とともに丁寧に描かれています。
蜻蛉日記を記した道綱の母寧子、中宮・定子の華やかな姿を随筆「枕草子」に残した清少納言、己の情熱を歌に込めた和泉式部、かな文字の歴史物語「栄花物語」を書いた赤染衛門など紫式部のほかにも多才な女性たちも作品に彩(いろどり)を添えました。

また、主演の吉高由里子さんが見せた気品ある演技と感情表現も見事で、特に左利きにも関わらず筆で優雅に書をたしなんでいる姿には心を奪われ私もあのような文字を書いてみたいと本気で思いました。
さらに、平安時代の宮廷文化が細部にわたり再現された美術や衣装にも目をみはりました。華麗な装束や屏風絵のような美しいセットは、まるで平安時代にタイムスリップしたかのような没入感を味わえました。そして反田恭平さんが奏でるピアノのテーマ曲は言うまでもなく、ドラマ中のラフマニノフのような耽美でロマンチックなメロディやモーツァルト的な柔らかな光りを放つように優雅な楽曲、場面ごとに挿入されたコミカルで自由なジャズ曲など、時代を超えた作品の魅力を際立たせるものでした。
視聴率の面ではよくわかりませんが『光る君へ』は大河ドラマでは描くのが難しい平安時代を舞台にしており、戦国時代ものが一般的にヒットする中で、かなり健闘したのではないかと思っています。個人的には2023年の「どうする家康」よりもはるかに良かったです。

さて、2025年の大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』にも大いに期待したいところです。このドラマの主人公である蔦屋重三郎は、江戸時代後期の出版文化を牽引した人物であり、多くの浮世絵や読本を世に送り出した耕書堂の創設者として知られています。彼がいなければ葛飾北斎や歌川広重といった名だたる絵師たちが今のように評価されることもなかったかもしれません。

実は、当院が入るこちらのメディカルモールはその蔦屋重三郎が耕書堂を営んでいた跡地で、文化的遺産を日々感じる場所に位置しています。今は大通りから一歩奥まった地にあり静かな落ち着いた佇まいのこの地が、かつて歌川広重が『東都大伝馬街繁栄之図』に描いたほど賑わいを見せていたことには驚きを隠せません。最近では、この場所で写真や動画を撮影する方や、ガイドツアーのような団体も見受けられるようになり、歴史的価値への関心の高まりを嬉しく思っています。
『べらぼう』では、蔦屋重三郎の情熱や苦悩、そして彼が周囲の才能を引き立てながら時代に挑んだ姿が描かれることでしょう。出版事業を通じて多くの人々に影響を与えた彼の生き方は、情報があふれる現代社会においても大いに通じるものがあると思います。また、ドラマを通じて浮世絵や江戸文化が再び脚光を浴びることで、歴史や文化に対する関心がさらに高まることを願っています。

江戸時代後期、蔦屋重三郎が築き上げた文化の土台は、その後の日本文化の発展にも多大な影響を与えました。蔦屋重三郎の挑戦の背後には、文化の力を信じて未来を切り拓こうとする強い信念がありました。その情熱が、現代の私たちにも多くの示唆を与えてくれるでしょう。
『光る君へ』が平安時代の宮廷文化を描いたのに対し、『べらぼう』は江戸時代の町人文化をテーマにしています。『べらぼう』がどのようにして蔦屋重三郎の人生を掘り下げ、彼の足跡を現代に伝えてくれるのか、今から放送が楽しみでなりません。
私は蔦屋重三郎が夢を追い求めた場所の一角で地域医療を提供していることを誇りに思います。これを機に、皆さまとともに歴史や江戸の文化についても語り合う機会を持てれば幸いです。『べらぼう』の放送が始まりましたら、感想やご意見をお寄せいただけたらと思います。当院からお帰りの際はぜひ歩道の「耕書堂跡地」の史跡表示の案内板をご覧ください。

クリニックの前の「耕書堂」跡の案内版

今年も皆さんの健康と幸せな毎日をお手伝いする医療パートナーとしておひとりおひとりに心をこめて診療に邁進いたします
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

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