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新型コロナウイルスワクチンについて ②

[2021.01.16]

さて、今回は新型コロナウイルスワクチンの接種についてお話しします。

ファイザーとモデルナのワクチンについて

すでにアメリカ、イギリスでは新型コロナウイルスワクチンの投与が始まっています。ワクチンの効果や副反応はいずれ明らかとなっていくと思いますが、ここではファイザー、モデルナのワクチンの治験の結果について見ていきます。

感染予防について

まず、ファイザーとモデルナのワクチンはmRNAワクチンという新しいワクチンです。これまで人で使用されたことはありません。


・第3相試験では、ファイザーは43,000人、モデルナは30,000人が治験に参加しています。それぞれ半分の人がワクチン接種を受け、半分の人が接種を受けていません。
・ファイザーのワクチンはワクチン接種を受けた人のうち、8名が新型コロナウイルスに感染しワクチン接種を受けていない人の162名が新型コロナウイルスに感染しました。
・モデルナはワクチン接種を受けた人のうち、5名が新型コロナウイルスに感染しワクチン接種を受けていない人の90名が新型コロナウイルスに感染しました。

・また、重症化についてですが、ファイザーのワクチンは接種された人のうち1名が重症者となり、接種されていない人の9名が重症化しました。
・モデルナのワクチンでは接種されたうち重症者はおらず、接種されていない人では11名が重症化しています。

感染者とも重症化とも両方とも非常に効果があることが分かります。FDAでは50%以上の効果で認可を与える予定だったようですが、両者とも90%以上の効果が認められたため、緊急的に認可がおり接種がはじまっているのです。

その後の解析データも含めて詳細はこちら↓をご参照ください。

ファイザー/ビオンテック
モデルナ

ワクチンの副反応について

ワクチンは副作用とはいわずに副反応といいます。
下記のFDAのサイトには様々な副反応の報告があります。
例えば、注射部の痛み(84.1%)、倦怠感(62.9%)、頭痛(55.1%)などは、プラセボ(偽薬)と比較して多く認められます。また、筋肉痛、悪寒、関節痛、38℃以上の発熱も認めます。
重大な副反応として注意しないといけないことは、アナフィラキシーショックと抗体依存性感染増強 (ADE;Antibody-dependent enhancement)でしょう。
ファイザーのアナフィラキシーショックは、昨年12月14日から23日間の間に189万3360本の接種後、21例に認めたとCDCは報告しています。
これは100万人に11.1人の割合となります。
ちなみにインフルエンザワクチンでは100万人当たり1.3人にアナフィラキシーショックが発生しており、およそ10倍となります。これは比較的多い副反応となっていますが、許容できない範囲ではないと考えられます。
ちなみに21名のうち17(81%)はERで対応しており、4名(19%)が入院し3名はICUに入室しましたが、全員が回復したことが分かっているようです。

つぎに抗体依存性感染増強 (ADE;Antibody-dependent enhancement)について考えます。
抗体依存性感染増強とはワクチンを接種したことによってできた抗体がウイルスと結合してその複合体が食細胞に取り込まれ、感染が全身に広がることをいいます。これはネコのコロナウイルス感染でみられ、同じことが新型コロナウイルスの近縁であるSARS-CoVのワクチンの開発中に認められました。

これはワクチンを投与しているだけでは分からない副反応となります。これが分かるのは、ワクチンを投与された人が新型コロナウイルスに感染した時なのです。例えばファイザーの第3相の試験では、ワクチンを投与した人は8名しか新型コロナウイルスに感染に感染していませんのでそのような副反応が起こるのかはいまのところ分かりません。

副作用等の詳細についてはこちら

mRNAワクチンのしくみについて

mRNAのしくみは、これまでのワクチンとはだいぶ違います。これまでのワクチンはウイルスの病原体の一部のたんぱく質やペプチドなどを使ってワクチンを作ってきましたが、mRNAワクチンでは病原体の遺伝子の一部を投与することによって、病原体の一部を個体の中で作らせてそれに対する免疫反応を誘導しようとしています。
RNAワクチンのメリットはいったん作り方がきまると普通のワクチンよりすぐに作ることができます。また、少しの変異があってもすぐにそれに対応することが可能です。核酸ワクチンにはDNAワクチンもありますが、DNAワクチンでは細胞のゲノムに病原体遺伝子が組み込まれる可能性がゼロではないのですが、RNAではゲノムに取り込まれることはありません。

ファイザーとモデルナ以外のワクチンについて

ファイザーとモデルナ以外のワクチンも開発されています。

国産のワクチンについてはこちら

海外のワクチンについてはこちら

新型コロナウイルスのワクチンを接種しますか?

以上が新型コロナウイルスワクチンの概要です。
皆様は接種を希望されるでしょうか?

日経メディカルOnlineと日経バイオテクが2020年11月20日~12月2日に実施した新型コロナワクチンに関するアンケート調査によれば、医師6830人のうち2019人(29.6%)が「早期にワクチン接種を受けたくない」と回答。このうち1441人は回答理由に「安全性が十分に検証されていないから」を挙げている、との報道があります。

実はすでの接種のはじまったアメリカでも医療従事者のある一定の割合(3割?)で接種を拒否しているとの報道もあります。やはりかなり急ピッチで作られたワクチンに対して懐疑的な見方をする人々が一定数いるのだと思います。
さて、日本では2月の下旬から接種が開始される予定とのことで、厚生労働省などで準備が進んでいるようです。

厚生労働省の資料はこちら

私は今のところ接種をしようかと思っています。一応?医療従事者でもあること、若者ではない(50代)こと、治験の結果は良好であることなどからです。しかし、全国民に接種をすべきかというとまだ何とも言えないところがあります。やはりまだまだデータが少ないこと、少なくとも日本では重症者が多くないこと、とくに若者では重症者がほとんどいないことなどからです。しかし、今欧米を中心に接種が進んでいるようで、副反応や感染拡大への予防にどれだけ効果があるのかが恐らく明らかになってくるでしょうから、注意深く見守りたいと思っています。

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