睡眠時無呼吸症候群と糖尿病の関係
~眠りのトラブルが血糖に与える影響~
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)は、睡眠中に呼吸が断続的に止まる病気です。
このSASがあると、2型糖尿病の発症リスクが高まったり、血糖コントロールが悪化することがわかっています。
糖尿病の治療を頑張っていても血糖がなかなか安定しない方は、眠りの質に問題がある可能性も考えられます。
SASが血糖値を悪化させるメカニズム
睡眠時無呼吸症候群によって血糖値が悪化する背景には、次のような複雑な身体の変化が関わっています。
原因 | 内容 |
---|---|
低酸素状態 | 呼吸停止により体内の酸素濃度が低下し、細胞がストレスを受け、インスリンの効果が低下します。 |
交感神経の過剰刺激 | 無呼吸が起こるたびに交感神経が活性化し、アドレナリンやコルチゾールなど血糖値を上げるホルモンが分泌されます。 |
睡眠の質の低下 | 深い眠り(ノンレム睡眠)が妨げられると、ホルモンバランスが崩れ、食欲が増進し、体重増加やインスリン抵抗性の悪化を招きます。 |
慢性炎症の亢進 | SASによる酸素不足やストレスにより、体内で慢性的な炎症反応が起こり、インスリンの働きが妨げられます。 |
つまり、SASは複数のルートから血糖値の悪化を引き起こす要因となるのです。
SASと糖尿病に共通する症状
糖尿病を持つ方で、次のような症状がある場合、SASを合併している可能性があります。
チェック項目 | |
---|---|
夜間のいびきが大きい | ○ |
睡眠中に呼吸が止まっていると指摘された | ○ |
日中の強い眠気、集中力の低下 | ○ |
起床時の頭痛や口の渇き | ○ |
夜間頻尿、寝汗 | ○ |
血糖コントロールが悪化している | ○ |
診断方法|まずは簡単な検査から
当院では、負担の少ない検査でSASの診断が可能です。
検査名 | 特徴 |
---|---|
簡易検査(在宅) | 指先センサーなどで酸素飽和度と呼吸状態を記録。自宅で簡単にできるスクリーニング検査です。 |
ポリソムノグラフィー(PSG) | 脳波・心電図・呼吸などを総合的に調べる精密検査。入院不要で自宅対応も可能です。 |
検査結果に応じて、SASの重症度(軽症・中等症・重症)を評価し、最適な治療をご提案します。
治療方法|眠りを整えると血糖も安定します
治療法 | 内容 | 効果 |
---|---|---|
CPAP療法(シーパップ) | 就寝時に鼻マスクから空気を送り、気道閉塞を防止。 | 睡眠の質を改善し、血糖値やHbA1cも改善する効果が期待できます。 |
減量・生活改善 | 食事指導・運動療法・禁煙禁酒 | 体重減少によりSASと糖尿病の両方を改善可能です。 |
マウスピース療法 | 軽症SAS向けに下あごを前に出す装置を装着 | CPAPが合わない方への選択肢となります。 |
特にCPAP療法を続けることで、HbA1cが0.4〜0.6%程度改善したという研究結果も報告されています。
まとめ|睡眠の質を高めることが血糖改善への近道です
糖尿病がうまくコントロールできない背景には、「眠りの障害」が潜んでいることがあります。
睡眠時無呼吸症候群を適切に治療することで、血糖コントロールが改善し、生活の質も大きく向上する可能性があります。
「血糖が下がらない」「いびきが気になる」「日中眠い」といった症状がある方は、ぜひ一度ご相談ください。
当院では、睡眠と糖代謝の両面から、皆様の健康をしっかりサポートしています。