高血圧、高脂血症、治療する?しない?
高血圧、高脂血症(脂質代謝異常)で受診される方がいらっしゃいます。以前であれば収縮期血圧が150mmHgあったら「薬のみましょう」、総コレステロールが250mg/dlあったら「薬のみましょう」ということになっていたように思います。今でもそんな感じで薬を内服している人を見かけますが、現在ではそんな単純な話ではなくなってきています。テレビや週刊誌などでは「血圧の薬は一生のまないといけない」とか「コレステロールの薬はのんではいけない」などという医師もいるようで(テレビも週刊誌もあまり見ないので、詳しくは知りません・・・ごめんなさい)、患者さんもどうしたら良いのか分からない様子の方もいらっしゃいます。血圧もコレステロールも(血糖値なども)測定値が正常値から外れているから治療するというわけではなくて、将来の合併症(ここでは脳出血、脳梗塞、狭心症、心筋梗塞などの脳血管障害)を予防するために治療するのであって、極端な話血圧がものすごく高くても、コレステロールがものすごく高くても、そういった脳血管障害を起こさないという保証があれば治療はしなくてもいいということになります。
同じコレステロールが250mg/dl の人であっても30代の健康な女性と、50代のタバコを吸って糖尿病のコントロールが悪く、血圧ももすごく高く、とても太っている男性の治療が同じはずはないのです。
動脈硬化学会のガイドラインでも、現在では一次予防(今まで病気を起こしたことがない人が病気になるのを予防する)として、年齢、性別、喫煙、糖尿病、家族歴などなどを点数化してその人のコレステロールの目標を決めています。これは結局は動脈硬化を起こしやすいか、リスクを層別化しているということで納得できる方法であると思います。一方でこの方法は動脈硬化そのものを見ているわけではないので、本当にそれでいいのか??という疑問も少なからずあると思います。
私は大学病院時代からずっと冠動脈CT検査をやっていましたので、スクリーニング検査で受けた患者様の冠動脈をよく見てきました。すると同じような血液データや背景にも関わらず、一方では動脈硬化でボロボロの冠動脈の人もいれば、全く綺麗な冠動脈の方もいて外側からではなかなか判断ができないという経験を何度もしてきました。年齢や性別、喫煙、糖尿病などのリスクの層別化は結局は直接血管を見ているわけではないので、一定の確率でそのような事例が出てくることになるのだと思っています。
東大病院では当時心臓外科の大野貴之先生(現 三井記念病院 心臓外科部長)たちが中心となって、糖尿病性網膜症の患者さんには冠動脈疾患が高率で合併することを報告していましたが、これは網膜症というある意味で直接的に血管を観察している検査なのでかなり信頼できる研究だったように感じました。
ところで当院では高血圧や高脂血症をどのように治療の介入を判断するかをお知らせいたしたいと思います。動脈硬化学会のガイドライン通りにやはりリスクの層別化が必要ですので、採血などで合併症について検査をいたします。ガイドラインでははっきりしたことは書いていないのですが、心電図やレントゲンなどで心臓の評価もいたします。心電図で心肥大、レントゲンで心拡大などがありましたら心エコーにて心肥大、心拡大、心機能もチェックします。そしてやはりABI/PWVなどで血管の硬さや狭窄などもチェック致します。
最終的には頸動脈エコーにて頸動脈のプラーク(コレステロールのたまり)を評価します。頸動脈エコーは20分程度で終わり特に痛みもない検査ですから、患者さんの負担も少ないです。この検査でプラークがたっぷりと認められればやはり積極的に治療した方がいいと思っています。先日も高血圧の患者さんでコレステロールが高めだった方に頸動脈エコーをしたところかなり大きなプラークがありましたので、早速内服治療を開始いたしました。
生活習慣病で治療中の方は、一度頸動脈エコーを行うことをお勧めいたします。もし検査にてある一定以上の頸動脈プラークを認めた場合、より積極的な治療が必要ということになります。当院では毎日頸動脈エコーが可能ですのでご希望者方は診察時におっしゃってください。