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高血圧の基準は変わっていません

[2024.06.03]

先日クリニックでたまたま同じ質問をされて驚いたのですが、今年になって高血圧の基準値が変わり以前よりも血圧が高くても許容されるようになったと一部で報道があるようです。その報道ではこれでイギリスやアメリカの高血圧の基準と同じになったとの識者のコメントがあるようですが、それは全くの誤報です。

実際には高血圧症の診断基準は収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上と全く変わっていません。

今回の報道は特定健診の第4期(令和6年度から)用いられている血圧受診勧奨判定値が、変更になったことから、高血圧の診断基準も変更になったという誤った報道がされているものと思われます。

厚生労働省による「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度度版)」の受診勧奨判定値を超えるレベルの対応についてこの内容は、以下のようになっており、これは、日本高血圧学会による高血圧治療ガイドライン2019年版の推奨と同じです。

●収縮期血圧≧160mmHg又は拡張期血圧≧100mmHg
→①すぐに医療機関の受診を
● 140mmHg≦収縮期血圧<160mmHg又は90mmHg≦拡張期血圧<100mmHg
→ ②生活習慣を改善する努力をした上で、数値が改善しないなら医療機関の受診を

この①の部分を指して、高血圧の基準が160/100になったと報道されているのです。実際には高血圧の診断と治療の基準は全く変わっていません。

ちなみに、海外では高血圧の診断基準が緩いというコメントもあるのですが、こちらも事実ではありません。

アメリカの最新の高血圧ガイドラインは、2017年にアメリカ心臓協会(AHA)とアメリカ心臓病学会(ACC)が発表したものです。下記を参考にしてください。

<アメリカの高血圧の基準値>


・正常血圧: 120/80 mmHg未満
・上昇血圧: 収縮期血圧120-129 mmHgかつ拡張期血圧80 mmHg未満
・高血圧ステージ1: 収縮期血圧130-139 mmHgまたは拡張期血圧80-89 mmHg
・高血圧ステージ2: 収縮期血圧140 mmHg以上または拡張期血圧90 mmHg以上


<治療目標>


・一般的な成人: 130/80 mmHg未満を目標に治療
・高リスク患者: 心血管疾患のリスクが高い場合や既往歴がある場合、同様に130/80 mmHg未満を目指す
・ライフスタイル変更: すべての高血圧患者に対して、ライフスタイルの改善(食事、運動、減塩、体重管理など)が推奨されます
・薬物治療: 高血圧ステージ1でリスクが高い場合、またはステージ2以上の場合は薬物治療が推奨されます

<欧州高血圧学会>


・治療開始血圧 18歳〜79歳 140/90mmHg以上
        80歳〜 160/90mmHg以上
・降圧目標  18歳〜79歳 140/90mmHg未満、できれば130/80mmHg
       80歳〜 150/80mmHg未満 できれば130-139mmHg

これをみると日本の高血圧の基準も海外の基準とあまり変わりありません。
治療については数字をみて一律に薬を内服するという考え方は好きではないですが、ライフスタイルの改善を図りつつ、高血圧が続く場合は降圧剤にて血圧コントロールをすることも考慮に入れたほうがいいと思っています。ご参考にお願いいたします。

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