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脳梗塞のあとが見られます

[2019.09.17]

「脳梗塞のあとがみられますね」と医師に言われたことありませんか?外来で診察をしていると、アスピリンを内服している方がいらっしゃいます。私は循環器が専門ですので、狭心症や心筋梗塞にアスピリンを処方している人は沢山いらっしゃるのですが、どうしてアスピリンを内服しているかよく分からない方も時々いらっしゃいます。そこで「いつから内服しているのですか?」「何で内服開始したのですか?」と聞くと、医師に「脳梗塞のあとがある」と言われた、という方がいらっしゃるのです。多くは脳ドックなどで検査をしてそのように指摘されていて、自覚症状は全くないのです。確かに脳梗塞の方であれば、アスピリンを内服するのは問題ないと思いますが、本当に脳梗塞なのかは断定できません。

「脳梗塞のあと」に血液サラサラは適切ではありません

脳ドックでみつかる「昔の脳梗塞の跡」は多くは「大脳白質病変」であると考えられます。「大脳白質病変」は神経細胞の変性や虚血などに関連した結果であり、この所見に対して血液サラサラ(アスピリンなど)を内服することは適切ではないとされています。

Japanese Primary Prevention Project(JPPP)という約15,000人の日本人のデータでアスピリンの内服が心血管死、脳卒中、心筋梗塞を予防できないという報告もあります。

アスピリンは脳出血を増やす可能性があります

ではなぜアスピリンがよくないというデータになるのでしょうか?実は脳ドックなどで頭部のMRI撮影をするとこんな↓所見が見られます。これは微小な出血のあとです。実は日本人は脳出血の多い民族なのです。ですから脳梗塞のあとがあるといってアスピリンを内服するのは脳出血のリスクを高めてしまうことになるのです。

 大脳白質病変は高血圧で進行し、認知症を悪化させます

さてこの白質病変があるとどうなるのでしょうか?実は白質病変は「認知症」と関連があると考えられています。白質病変が増えてきて認知機能が低下するというとなんだか恐ろしい感じがしますが、私はこの関連については実感があります。患者さんの中で最近何か変なことをいうなあと思った方で頭のMRIを撮影すると顕著な白質病変を認めることが高率にあるのです。

さて、この白質病変がみつかったらどうすればいいでしょうか?実は白質病変は一度できると改善しないことが分かっています。ある意味では脳神経細胞の成れの果てなのですから改善しないことは想像できます。それではこの白質病変ができないようにする、もしくは悪くならないようにするにはどうしたらいいのでしょうか?白質病変と最も関係があるのは「高血圧症」なのです。高血圧→白質病変→認知症という病状の進行が推測されています。高血圧以外にもメタボリックシンドロームとも関連するとの報告もあるのですが、なんといっても高血圧がもっとも関連します。

大脳白質病変、認知症は高血圧治療よって進行を防止できます

Syst-Eur試験やSCOPE試験、PROGRESS試験などにより、カルシウム拮抗薬、ARB、ACE阻害薬などによって認知症の発症を予防したり、認知機能の悪化を防止することができることが明らかとなっています。このことから白質病変を認める高血圧の方は積極的な降圧治療が求められます。これまでのところ降圧によって認知症が進行したという報告はありませんので、高血圧があり頭部MRIにて白質病変を認めた(脳梗塞のあとがあると言われた)、認知症が心配という方は当院へご相談ください。

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