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塩分摂取について

[2020.01.13]

先日NHKスペシャル・シリーズ「食の起源」において、塩について放送されていました。ご覧になった方もいらっしゃると思います。私も録画をして見ることができました。NHKスペシャルの割にはいささか軽いタッチの放送でしたが、さすがはNHKだけあって大変興味深い内容になっていました。

病院受診する人の中で高血圧の患者さんはとても多いです。その方たちは皆さん塩分制限を指示されますが、きちんと守ることが出来ているでしょうか?
食事の中の塩分をきちんと測定することはとても難しく、なんとなく塩分制限しているつもりの方も多いと思います。そもそも我々はどの程度を摂取しているのかをよく認識していただく必要があります。

下記は2010年の塩分摂取量の国際比較です。我々をはじめとしたアジア人が塩分摂取が非常に多いことがよく分かります。

これをみると、お米を食べる民族の塩分摂取量が多いことが分かります。

実は患者さんとお話していて塩分摂取について聞くと、多くの方が「減塩している」とおっしゃるのです。しかし、この「減塩」は本当に十分なのかは個人差がとても大きいと思っています。というのも、「減塩しています」という患者さんが入院した時に、病院の食事に対して「全く味がしない」とおっしゃる方がとても多いのです。

病院食は多くの病院で常食で塩分10g前後、減塩食では6-7g以下となっていると思います。減塩食では確かに味がしないのは分かるような気がするのですが、常食でも「全く味がしない」といって自宅からふりかけを持ってきたりして食べている方も多いのです。塩分の感じ方は相対的なものが多いのですから、普段しょっぱいものを食べている人は塩分が10gであっても味がしないと感じるのでしょう。

NHKスペシャルでも言っていたように、塩というのは麻薬的な働きがあります。入院患者さんも塩分が少ないというのは本当につらいようで、あの手この手で塩分を摂取しようとします。

循環器内科の入院では高血圧や心不全の方がほとんどなので、入院中は基本的に塩分制限の食事にします。すると、患者さんは塩はダメと言われたからと醤油を持ってきます。醤油もダメというと、ふりかけを持ってきます。ふりかけもダメというと、漬物を持ってきます。漬物をだめというと最後には梅干を持ってくるといった調子です。患者さんのところへまわるたびに悲しい思いをしてきた医師は自分だけではないと思います。

さて、自分の塩分摂取量をきちんと測定するにはどうすればよいのでしょうか?もちろん食事中の塩分を測定できればいいのですが、実際にはなかなかできません。

有効な方法として、尿中のナトリウム量を測定して塩分摂取量を推定するという方法があります。口から摂取したナトリウムは80-90%程度尿中に排泄されますので、そのナトリウム量を測定すれば塩分摂取量も推定できます。実は多くの治験はこの方法で塩分摂取量を推定しています。

ただし正確に測定するには一日の尿をためて測定しなければなりません。しかし普段の生活の中で尿をためることはできません。しかしに朝起きて二回目の尿を検査に出す方法で代用する方法があります。この方法は正確性には難がありますが、傾向をみるには簡便で有用な方法だと考えられます。

この方法の利点は同時にカリウム摂取を推測できることです。よく言われているように、カリウム摂取は腎機能障害の人を除いた高血圧の人にはよく勧められています。カリウムの摂取によりナトリウムの体内の吸収を抑えてくれるので血圧降下には有効と考えられています。ですから、塩分の絶対量が不正確であってもナトリウム/カリウム比は適切な食事を取ることが出来ているかの指標となります。

実は研究用として尿中のナトリウムとカリウムの比を測定する機器が販売されているようですが、こちらは210,000円と購入するのは現実的ではありません。

ですから現状では外来にて検尿を行い、だいたいの摂取量、摂取割合を推定するのが現実的だと考えられます。

減塩については、食塩感受性の違いにより一律の減塩を認めるべきではないという論争があることは分かっていますが、そもそもアジア人は食塩感受性の多い民族であることや、たった数グラムの減塩で副作用がなく血圧低下を達成できることが分かっていますので、降圧剤をたくさん内服するよりはよっぽど健康的であると考えています。

かくいう私も高血圧患者として降圧薬を内服しておりますので、減塩には少し?注意しています。塩味の感じ方は個々で様々であると述べましたが、食べ方の工夫でも減塩ができると思います。例えば↓はうちにある減塩小皿です。

このように土手のある醤油小皿で醤油のつけすぎを防ぐ方法や、塩は最後食べる前に振りかける方法などもあります。

当院では上記に述べました尿中のナトリウム、カリウム排泄量などから塩分、カリウム摂取量を測定することが可能となっております。高血圧のかたなど塩分やカリウム摂取について気になる方はご相談ください。

 

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