血圧が高いと言われたら
高血圧で降圧剤を内服している方はたくさんいらっしゃると思います。当クリニックにも高血圧で治療中の方は多いです。手元の資料によると我が国の高血圧の患者数は約4000万人ほどいらっしゃるとのことでまさに国民病と言っても過言ではありません。昔の日本人は血圧が高く、脳卒中(脳出血)で亡くなることが多い民族と言われてきました。これは塩分摂取量が多いことと関連すると推測されており、塩分摂取量が減るにつれ脳出血が減ってきております。とはいえ現在でも高血圧の患者様は多く降圧剤は一般内科医師が最も多く処方する薬剤の一つだと思われます。
ところで高血圧の診断を受けて病院や診療所を受診するとどのような診察を受けますか?多くの病院、診療所では内服薬を処方され、定期的に受診するように勧められると思われます。これは全くの間違いではないと思いますが、これでは患者さまのニーズに必ずしも答えているわけではないと思います。とくに初めて高血圧を指摘された方の場合、なぜ?高血圧になったのか、降圧剤は一生のみつづけなければならないのか、自分は何に気をつけなければならないのか?という疑問が湧くのではないでしょうか?
この疑問に簡潔に答えることは容易ではありません。今日は「本当に血圧の薬を内服するだけでいいのか?」という疑問について考えてみたいと思います。
先日も50歳くらいの男性で、もともと高血圧の薬を1種類内服されていた方が、「最近いままでより血圧がものすごく高くなった」といって受診されました。その方は確かに以前は内服していて血圧が120-130くらいと良好なコントロールでした。内服薬もそれほど強くない薬1種類です。それが自宅で血圧を測ると上が180下が120くらいあるとのことで、診察室で測定すると上が174下が112と確かに高いのです。また、別の60代の女性もそれまでは血圧が低いくらいなのに、最近急に血圧が高くなったと受診されました。
実はこの患者さんたちはまだ確定診断はついておりません。しかしこのような場合血圧の薬を増やしたり、開始したりで対応してはいけません。高血圧の分類はいくつかありますが、大きく分けて「本態性高血圧」と「二次性高血圧」の2つがあります。「本態性高血圧」は要するに年とともに血圧が高くなるようなもので、原因が特定できません。「二次性高血圧」はホルモンの異常などで起こる高血圧になります。この「二次性高血圧」を除外しておく必要があるのです。
二次性高血圧症には原発性アルドステロン症、腎血管性高血圧症、腎実質性高血圧症、睡眠時無呼吸症、薬剤性高血圧症など様々な疾患がありますが頻度として多いのは、原発性アルドステロン症や睡眠時無呼吸症です。原発性アルドステロン症は高血圧患者さんの10%前後にみられる疾患で、副腎からアルドステロンというホルモンが過剰に分泌されて高血圧になる病気です。副腎摘出が可能な片側性では手術適応となりますが、両側性の場合には内服薬にてコントロールすることになります。原発性アルドステロン症による高血圧患者さんの場合、脳血管障害、冠動脈疾患、不整脈など重大な心血管合併症が非常に多くなるために積極的な診断が非常に重要となります。睡眠時無呼吸症による高血圧の場合、治療抵抗性高血圧であったり早朝高血圧、夜間高血圧などのnon-dipper型(夜間も血圧が下がらない)、またはriser型(夜間に血圧が上がる)高血圧と呼ばれるパターンを認めることがあり、血圧のパターンに異常を認める場合には検査が必要です。また睡眠時無呼吸症が合併した場合、CPAPによる治療により夜間に血圧が下がるdipper型に戻ることが知られておりその点からも正確な診断と治療が求められています。
高血圧についてお話することはたくさんありますので、今後もブログにて情報発信を続けたいと考えております。