ロカボで行こう!?
「ロカボ」とは
皆さんの中に「ロカボ」という言葉を聞いた方はいらっしゃるでしょうか?「ロカボ」は糖質制限食の一種で、糖質制限については一般の方で知っている人はものすごく詳しい人がいる一方で、医師の中にもあまり関心を持っていない方もいるように思います。
「ロカボ」という言葉は、北里研究所病院 糖尿病センター長の山田悟先生が提唱している言葉で「緩やかな糖質制限食」のことを指します。山田先生は低糖質を意味するlow-carbohydrate(ローカーボ)と「ロカボ」を区別して名付けています。一般的な「糖質制限」というとライザップが有名ですが、激しい糖質制限はリバウンドや身体に悪影響がある可能性があり、副作用の少ない「緩やかな糖質制限」⇒「ロカボ」をお勧めしているのです。
体に良い食事とは
さて、人の体は毎日ほとんど変化がないように見えますが、実際には毎日のように新しい細胞と入れ替わっています。その入れ替わる細胞の元となるものは口から入れる食べ物によるものですから、毎日の食事は大変重要であることは多くの方が納得されることと思います。一方でどのような食事が体に良いのかは昔から議論されてきており、現時点で結論はありません。
私も日々患者さんと向き合っていて、「バランスの良い食事」をしましょうとか、「外食・コンビニは控えて」「食べ過ぎに注意」などとアドバイスをするものの「バランスの良い食事」が一体何を指すのか「外食・コンビニ」の何が悪いのかを現時点ではっきりと指すことは難しいと感じています。
これまで多くの生活習慣病の患者さんと接してきて(とくに働き盛りの男性に多いのですが)、「自分はほとんど外食だけど、食事には気を付けています。これ以上何を気を付ければいいのか分からない」とおっしゃることをしばしば経験します。
そういった方の食事内容を聞くと、朝はトースト1枚・コンビニのサンドイッチ・おにぎりなど、昼はお蕎麦・うどん(それもほとんど具がないもの)、夜はいろいろ、というパターンです。確かにどこを気をつけていいのか?と思っていたものです。それにしても「昼は蕎麦かうどん」という人の肥満率が高いことは気になるところでした。
カロリー制限について
多くの生活習慣病の人は「カロリー」を気にして食事をしていると思います。我々も栄養指導を指示することがありますが、糖尿病の人の食事はカロリー制限で指示をします。例えば身長170㎝、70㎏の55歳の人は、標準体重が64.6㎏ですから64.6×30kcal=1940kcalということになるので、カロリー制限は1800kcal~2000kcalと指示することになります。この年代の日本人の平均的な摂取カロリーは2450kcalと言われていますから、約500kcalのエネルギー制限食となります。これをずっと続けるのは大変でしょうね。
人によっては運動でカロリーを消費してカロリーをマイナスにして瘦せようとしていると思いますが、この考え方は残念ながら今では正しいとは言えません。カロリーの足し算、引き算で血糖値を改善させたり、痩せようとする考え方は古い考え方です。
血糖値をあげるのはカロリーではありません
まわりくどくなりましたが、血糖値を上昇させるのはカロリーではなく、「糖質」です。ちなみに糖質は炭水化物から食物繊維を除いたものです。
例えば、「白いご飯1杯」は糖質55g含まれていますが、「鶏の唐揚げ3個」には糖質4.2gしか含まれません。健康な人でも糖質1gでだいたい1血糖値が上がるので、「白いご飯1杯」食べると健康な人でも血糖値は55あがることになります。いっぽう「鶏のから揚げ3個」を食べても血糖値は4.2しかあがりません。糖尿病の人は3倍ほど血糖値が上がる人もいますので、「白いご飯1杯」で血糖値が165あがることもありますが、「唐揚げ3個」では12.6しかあがらないのです。
ところで膵臓からインスリンが分泌されると体に脂肪をため込んで肥満になるといわれています。よって、血糖値を上げなければインスリンもそれほど出ることはなく、体に脂肪はつかずにやせていくと言われています。
ロカボに取り組んでいきます
糖尿病の方の中には「痩せている糖尿病」の方も多くすべての人に当てはまるわけではないのですが、肥満傾向で生活習慣病(とくに糖尿病)の方は「ロカボ」を意識して取り組んでいただきたいと思っています。
食事療法は奥深いところがあり、簡単にお話しすることは難しいのですが、今年度(2021年度)さいとう内科・循環器クリニックでは「ロカボ」で行こう!をテーマに取り組んでいきたいと思っています。今後も院長ブログでは「ロカボ」について取り上げていきたいと考えておりますのでお楽しみに!